「参加型リーダーシップ」は従業員のメンタルヘルス向上と組織の成長に効果大
「参加型リーダーシップ(Participative leadership)」とは、経営者(リーダー)が従業員を意思決定プロセスに積極的に参加させ、協力を促進し、責任を共有する経営スタイルだ。最終的な決定権は経営者にあるが、従業員は自由にアイデアを出し、仕事に必要なリソースやサポートを受けられる。 2022年に『Frontiers in Psychology』誌に発表されたレビューによると、このリーダーシップスタイルは、従業員のメンタルヘルスと組織の成長の両方に良い影響を与える。 「自律性、協力、オープンさが特徴の参加型リーダーシップは、従業員に創造的なアイデアや解決策を提供させることで、革新的な働き方を促し、より良い意思決定をもたらす」と研究者たちは説明している。 以下は、参加型リーダーシップが従業員に有益である2つの理由だ。 ■1. マイクロマネジメントからの解放され自分の価値を感じる 従業員が自分の声が受け入れられ、意見が尊重されると感じると、仕事への愛着が深まり、自己達成感や職場での心理的安全性が高まる。 研究者たちはまた、参加型リーダーシップが自律性と目標達成に対する自信を育むことが、従業員の幸福に不可欠だと指摘している。指示を逐一受けるのではなく、従業員は信頼されて成功を任される。この「所有感」が職場の士気や幸福感を向上させる。
従業員は単なる給料以上のものを求めている
■2. 成長し、燃え尽きを回避できる 参加型リーダーシップは、感情的な健康を重視する職場環境を育むことで、従業員が心理的に成長するのを助ける。オープンなコミュニケーションと協力が奨励され、従業員は自分の意見や懸念を安心して表明できる。 意思決定に参加することで、無力感が軽減され、仕事に対するコントロール感が高まる。これは、ストレスや燃え尽きを防ぐ重要な要素だ。 最近の研究では、参加型リーダーシップが従業員の感情的な疲労を和らげ、ワークライフバランスの向上に貢献することが示されている。 研究者たちは、経営者が共感力と感情的な理解力を持つことで、従業員のストレスを軽減できると提案している。そうした経営者は、従業員が直面するプレッシャーを理解し必要なサポートを提供することができる。 さらに、2021年に発表された研究では、新型コロナウイルスによるパンデミックの際に最前線で働く従業員の幸福に、参加型リーダーシップと経営者の誠実さがどのような影響を与えたかが調査された。経営者からの注目、サポート、エンパワーメントが、従業員の職場での成長と危機時に他者を助ける能力を高めたという結果が得られた。 加えて、参加型リーダーシップが提供する共同体意識と責任の共有は、現在急速に増加しているメンタルヘルスの問題である職場での孤立に対する緩衝材となる。 しかし、経営者はバランスを取ることが重要だ。意思決定に従業員を巻き込むならば、彼らに力を与えるべきであり、負担だけを増やすものであってはならない。参加型リーダーシップが過度な業務量を招くと、逆にストレスが増加する可能性があるため、経営者は責任を委譲するだけでなく、従業員がそれに対応できるリソースと時間を確保しているかを確認する必要がある。 職場がこの方向に進むためには、経営者は信頼、共感、オープンな対話を優先し、組織全体からの意見を奨励することが重要だ。企業は、管理職に感情的な理解力をトレーニングし、フィードバックのためのプラットフォームを作り、それを真剣に受け止め、従業員が意味のある形で貢献できる機会を提供することから始めるべきである。 従業員は単なる給料以上のものを求めている。彼らは尊重され、意見が受け入れられ、支えられていると感じる環境でこそ成長できる。リーダーシップが従業員の幸福を優先すると、全員にとって利益をもたらすポジティブな職場文化が育まれる。 真にポジティブな職場を築くためには、リーダーシップは単なる管理を超え、従業員の幸福を積極的に支援し、その成長と充実を組織の成功の基盤とする必要がある。
Mark Travers