三木孝浩監督が惹かれた俳優・永瀬廉の魅力「ふとした瞬間に憂いの部分が表出する」【オフィシャルインタビュー】
■永瀬廉と出口夏希が初共演で見せた相性の良さ “月”と“太陽”のような2人が照らす光
他人ごとではなく、自分ごととして――。その三木の意識は秋人と春奈を演じた永瀬、出口らの役者陣はもちろん、三木を筆頭とするスタッフ陣にも共有された。もし自分が余命を宣告されたらどういう気持ちになるのか。命の期限を明確にされた時、自分はその中でどう生きようとするのか。それは視聴者への問いになり、映画の中で生きるキャラクターたちを見て「あなたはどう感じますか?」というさらなる問いへとつながっていく。 「その問いそのものが“余命もの”の一番大きなファクターかなという気はしています」(三木)。自らに余命が迫る中、さらに短いスパンで命のリミットが近付くヒロインに懸命に恋をする主人公・秋人を演じるのは永瀬。永瀬とは初タッグとなる三木は、「もともと彼の声がすごく好きだった」と語る。 「キラキラしたアイドルの方なのに、憂いを帯びた声。陽と陰で言うと、陰のニュアンスを持った方だなと思っていました。それが秋人の諦観した感じや、自分の運命を自嘲的に捉えているところ…でも落ち込む時はしっかり落ち込むみたいなキャラクターと重なるなと。ご本人は普段はとても明るい関西のお兄ちゃんですが(笑)、お芝居になるとふとした瞬間に憂いの部分が表出する。それは永瀬くんの魅力だなと思います。秋人に関してはこれまで斜に構えていた彼が、春奈に出会うことで“ただただこの子のために生きたい”と思うようになる、変化のカーブを描きたかった。それには永瀬くんがもともと持っている人の良さ、一生懸命さ、健気さが必要だったし、そこはうまく引き出せたのかなと思っています」と自信をみせる。 秋人が恋に落ちる春奈には、今日本映画界が最も熱い視線を注ぐ若手俳優・出口だ。「彼女はあの見た目通り、本当にキラキラしていて全然死ななそう(笑)。だからこそ春奈というキャラクターが活きるし、“こんな子なのに余命があるんだ”という切なさとショックにつながったと思います。出口さんに最初にお会いした時もある意味衝撃的で、光がだだもれている感じがしました。監督なら誰もが彼女を起用したいと思うだろうなと。僕がこれまでお仕事した女優さんみたいに、会った瞬間に“まぶしい!”と感じる方々と同じような輝きを感じましたね。出口さんの魅力はご本人のかわいらしさや、表情の豊かさはもちろんとして、お芝居をお芝居じゃなくする力。本当にキャラクターとして生きて心が動いている姿を、きっちり映像に乗せてくるところがすばらしかったです」と感嘆する。 月のような静かで優しい光を持つ永瀬と、太陽のようなまぶしさで周囲を照らす出口。初共演となる2人のバランス、相性も三木の予想以上のものとなった。