冬舞う蛍?(6月7日)
ある民間気象会社のサイトをのぞくと「ほたる情報」が目に留まる。桜前線ならぬ蛍前線といったところか。全国各地の「見頃」を知らせる。県内ももう少しで、あの幻想的な淡い光が現れる▼日本人は虫との触れ合いから季節を感じ取ってきた。春は野に蝶[ちょう]を追う。カブトムシやクワガタは夏休みの思い出と分かち難い。〈蛍獲[え]て少年の指みどりなり〉(山口誓子)。季語として俳句の題材にも。秋の夜長はコオロギやスズムシのにぎやかな交響曲に酔いしれる▼歓迎されない虫が農家を悩ませている。カメムシが全国で大発生し、農林水産省によると栃木、茨城など30都府県に「注意報」が出ている。リンゴやナシ、モモの汁を吸い、実を傷つけて落としてしまうだけに厄介だ。農家は駆除に追われる。福島県をはじめ東北地方も警戒が必要という。「一寸の虫にも五分の魂」と悠長に構えている場合ではない▼人間がもたらした温暖化の影響だろうか。昨秋に生まれた幼虫が、冬の季節外れの暖かさで生き残ってしまったのが増殖の原因らしい。今月は環境月間。熱にうなされた自然を考える。蛍舞う冬となれば、「これも一興」などと愛[め]でてはおれまい。季語も狂う。<2024・6・7>