「闇バイト」強盗に備え、仙台の町内会で防犯カメラ増加 適切な設置のステップは?
仙台市内で町内会設置の防犯カメラが増えている。市の補助制度を利用した設置台数の累計は、ここ5年で2倍以上になった。「闇バイト」絡みの強盗や特殊詐欺のニュースに接し、これから設置を考える団体も多いとみられ、市は予算枠の拡大を検討している。(編集部・関川洋平) 【グラフ】仙台市の防犯カメラ設置補助事業の実績 市の制度は2015年度にモデル事業として始まり、17年度から本格実施された。町内会など地域で防犯活動をする団体に設置費用の4分の3(上限30万円)を補助する。近年の実績はグラフの通り。集計中の24年度は最終的に約40台が設置される見通し。 市市民生活課は「23、24年度は予算枠を上回る申し込みがあり、課内で予算をやりくりして受け付けた。地域の防犯意識の高まりを感じる」と説明する。 若林区の南石切町町内会は昨年10月、往来の多い丁字路に面した集合住宅の壁に2台目のカメラを設置した。同じ場所から別の向きを撮る1台目を23年10月に設置しており、丁字路全景の撮影が可能になった。 町内で特殊詐欺の被害が出たことで設置を決めた。片岡昭夫会長(84)は「安心感が高まった」とする一方「カメラはあくまでも機械。施錠など基本的な防犯対策と組み合わせることが大切だ」と語る。 泉区の旭丘堤町内会も近年、空き巣や集会場が荒らされる被害があったため、今月から2月にかけて4台を設置する。伊藤和博会長(65)は「外から町内に入る主要な道路など、警備会社と相談して設置場所を決めた。次年度も追加で数台を取り付ける」と言う。 市市民生活課は闇バイトに関する報道の影響が25年度の申請件数に現れると見込む。「設置希望は増える傾向にあり、財政サイドに予算枠を広げるよう要求している」と述べた。 ■「一番必要なのは地域の合意」 仙台市の補助制度を利用して町内会が防犯カメラを適切に取り付けるには、一定の手順を踏むことが求められる。取材を基にまとめた制度を利用する場合の流れは表の通り。 法律上、カメラの設置自体に「許可は必要ない」(宮城県警生活安全企画課)。一方、プライバシー侵害などを懸念する人もいるため、町内会の総会に諮るなどして地域で合意することが大前提となる。 設置場所については警察署に相談すれば、犯罪の発生状況や不審者情報を踏まえた提案が受けられる。個人宅の玄関などが映り込む場合は、住民から個別に同意を得る。 マンションの壁面などに取り付けるなら管理組合の、送電用の電柱に設置するなら東北電力ネットワーク(青葉区)の許可が必要だ。 東北電ネットは、1基当たり年1080円の「共架料」を定めた基本契約を結んだ後、具体的な申請に進む。設置可能かの書面調査は1基につき300円、現地調査は800円。電柱が立つ道路などの管理者の許可も別に要る。 カメラの仕様は、市が定める「200万画素以上」などの性能要件に応じて決める。撮影方向を操作できるものもあるが、県防犯整備士協会(青葉区)は「可動部分が多いと故障の恐れも高くなる」と指摘する。 設置費を含めた費用は、南石切町町内会(若林区)が本年度に設置したカメラが24万5300円。設置手続き中の旭丘堤町内会(泉区)は1台当たり約30万円を見込む。設置場所や、周辺機器の有無でも変わる。 宮城県の「防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン」に沿った運用が求められ、管理運用規定で、管理責任者や録画データの管理方法を定めておくことも欠かせない。 補助申請の受け付けは本年度は5~8月の4カ月間だった。補助決定の通知を受けて設置工事に入る。設置したカメラの写真などを添えた実績報告書を提出すると、補助金が交付される。 南石切町町内会の片岡昭夫会長(84)は「手続きは正直、面倒だった」と苦笑い。「一番必要なのは地域の合意。これがないと、いくら頑張っても設置計画は水の泡だ」と強調する。
河北新報