ベントレーの新型「コンチネンタルGT」は「ウルトラ」なクルマ?
先代モデルの第3世代コンチネンタルGTスピードが搭載していたパワートレインは、6.0リッターのW12エンジンだ。電気モーターは付いていなかった。排気量が大きく気筒数も多いが、動力性能は最高出力659PS、最大トルク900Nm、0-100km/h加速3.6秒(最高速度は335km/hで変わらず)だった。新型は電動化しているので単純な比較はできないが、W12エンジン搭載の先代よりもV8エンジン搭載の新型の方が大幅にスペックアップしている。このあたりが「ウルトラ」といわれる所以だ。 さらに付け加えると、電気モーターによって低速トルクが向上し、V8エンジンと電気モーターが連携することでピークトルク(最大トルク)も向上している。高回転域でもV8エンジンのトルクはW12エンジンよりも高く、最高出力にいたってはすべてのエンジン回転域でW12エンジンを上回っているという。
発表会の会場では、非公式記録としながらも、海底トンネル内(ノルウェーのローガラン県にある全長14.4km、深さ292mのルフルケトンネル)で世界最高速度の新記録を叩き出した際の映像が流された。画面越しとはいえ、野太く、力強いトルクフルなエンジンサウンドで、ウルトラにふさわしい流麗な音色だった。
■ベントレーとの接点が増えていく? 発表会では記者からいくつかの質問が出たが、「ベントレーと接点を持っていないユーザーもたくさんいる。こうした人たちにどうアプローチしていくのか?」という問いは印象的だった。これに対して開発担当者は、「さまざまな場所でポップアップイベントを開催し、より多くのお客様にベントレーの存在を知っていただきたいと考えています。さらに、気軽にベントレーに触れていただき、試乗できる機会を増やしていきたい」と回答していた。 高級車ともなると、どうしても気軽には試乗しにくいところがある。初代コンチネンタルGTのヒットで広く認知されたとはいえ、まだ一部のクルマ好きのブランドというイメージもある。クルマに詳しい一部の富裕層しか相手にしないのでは、ビジネスとして成り立たない。ベントレーは決してそんなブランドではない(かつて、まったく買う可能性のない筆者が正規ディーラーを訪れたときも、とても快く応対してくれた)が、多くのユーザーがベントレーと接点を持てるようになることで、クルマの価値を比較できるようになるし、購入を検討するときの判断材料にもなる。誰もが手が届くモデルではないが、買える、買えないは別として、ベントレーの大胆なプロモーションには期待したい。
価格はコンチネンタルGTスピードが3,930万3,000円、オープン仕様のコンチネンタルGTCスピードが4,312万円。生産は2024年第3四半期からで、日本へのデリバリーは2025年の第1四半期を予定している。 ■ 室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。
室井大和