「ロシアのやりたいように」させたら、ウクライナで何が起きてきたか見てみよう
「いや、わたしはあなたの国を守らない」。米国の前大統領で、事実上のレイプを行ったと裁判で認定され、2020年の大統領選の結果を覆そうとして国家を欺いた罪などで起訴されている刑事被告人、ドナルド・トランプは、2月10日、サウスカロライナ州コンウェーで開かれた選挙集会で、自身が言ったという言葉を自慢げに紹介した。 2017~21年の大統領在任中、北大西洋条約機構(NATO)のある加盟国の首脳から、その国が十分な軍事費を負担していない場合、米国はどう対応するかと問われて、そう答えたそうだ。トランプはその首脳にさらにこう伝えたという。「むしろ、彼らにやりたいことは何でもするよう勧める」 「彼ら」というのは、ロシアのことだ。 2022年3月上旬、ウクライナ北中部ブチャのヤブルンシカ通りで、ロシア兵らは多数の民間人を虐殺した。これが彼らの「やりたい」ことのひとつだ。 住民のジャンナ・カメネバは、友人のタミラ・ミシュチェンコとその14歳の娘アンヌ、隣人のお年寄りマリヤ・イリチュクを自分のミニバンに乗せ、急いで避難させようとした。 車がヤブルンシカ通りに入ったとき、ロシア兵が発砲した。少女1人を含む女性4人は、全員亡くなった。「バンはやがて炎に包まれた」。ヤブルンシカ通りでの犠牲者のうち36人の身元を特定したニューヨーク・タイムズ紙はそう報じている。 「彼らにやりたいことは何でもするよう勧める」とトランプは言った。 ロシアは2022年3月16日、ウクライナ南部マリウポリの劇場を爆撃した。これが彼らの「やりたいこと」のひとつだ。 その日、この劇場には、ロシア軍の砲撃や爆撃から逃れるため、高齢者や女性、子ども、赤ちゃんら1000人ほどが集まり、身を寄せ合っていた。「避難してきた方たちは、ここなら安全だと思っていたんです」。劇場の元舞台監督オレナ・ビラはAP通信に語っている。 安全ではなかった。ロシア軍の爆弾が劇場に投下され、吹き飛ばされたり、焼かれたり、押しつぶされたりして、少なくとも600人が亡くなった。高齢者や女性、子ども、赤ちゃんらが亡くなった。 歴史ある港町のマリウポリは、その後、ロシアの手に落ちている。