常滑焼「爆買い」の的に 上海出身コンサルタントの狙い
常滑焼「爆買い」の的に 上海出身コンサルタントの狙い THEPAGE愛知
愛知県常滑市を中心に生産される焼き物・常滑焼を、同市の中部国際空港(セントレア)に降り立つ中国人観光客にアピールする専門店「常観堂(じょうかんどう)」がこのほど、同市鯉江本町に開店した。中国・上海市出身のオーナーで常滑市在住の常春さん(43)は「中国人観光客を常滑に呼び込んで、日本文化を伝えていきたい」と意気込み、旅行代理店や宿泊施設などとの連携を進めている。
江蘇省宜興市で常滑焼の急須が高評価
店は日本文化を伝えようと、築90年ほどの木造2階建て古民家を改装。1階は常滑焼作家の作品や中国茶を置き、試飲スペースも設けた。2階はギャラリーで急須や茶わんが並ぶ。店の外には中型バスが駐車できる場所もある。 常さんは、中国進出を考える企業を対象にしたコンサルタント業務や、常滑焼などの日本伝統工芸品の代理商などをしている。2年前から上海市のほか、常滑市と同じく窯業が盛んな中国の江蘇省宜興市で、常滑焼の見本市を開いている。現地では、常滑焼の急須が高評価。「お茶を注いだ時に、滴が垂れず、湯切れがいいという品質の高さに、注目が集まった」と魅力を話した。 専門店開設のきっかけは、見本市で高い評価を受けた常滑焼を、訪れる観光客にじかに触れてもらおうと考えたこと。さらに近年目立つ中国人観光客による大量の買い物、いわゆる爆買いで、常滑焼にも関心を寄せる狙いもある。
常さん「中国人にとって日本は旅行しやすい国」
爆買いについては、中国経済の衰退によって中国人観光客が減っていくとの見方もあるが、常さんは「当分は減らない。爆買いもしばらくは続く」と見る。 常さんによると、中国人にとって日本は旅行しやすい国だという。理由は「水や空気がきれいで治安もよく、アジアの先進国家として、一度は訪れたくなる」から。「日本へ旅行した人が再び日本に訪れるリピート率は80%。飛行機で2時間あれば来ることができる近さも魅力」と述べた。 爆買いについては「富裕層の中国人が、自分用に買い占めていると見られがちだが、実際は日本を旅行する中国人が、友人に買い物を頼まれたケースがほとんど」と指摘。「日本の製品は中国で買うと税金がかかって高額。日本へ行く人に買い物を頼めば安心で、買い物する人にお小遣いをあげても安いくらい。中国では偽物も出回っているので、日本で買うことが日本製品を確実に手に入れる手段として定着している。円安も後押しした」と理由を語った。
地域住民らと中国人観光客の受け入れ協力関係築く
常さんは、宜興市で窯業を教える高校と提携。常滑市内で常滑焼生産の見学や体験のほか、書道や着物などの日本文化に触れるツアーの準備を進めている。 常滑焼の生産者や地域住民らとも交流し、中国人観光客の受け入れに対する協力関係も築いている。「常滑市にセントレアがあって、たくさんの中国人観光客が降り立つのに、単なる通過点になっているのはもったいない。常滑焼の良さを知ってもらい、購入につなげることで、常滑が盛り上がる。 店はそのための拠点にしたい」と力を込めた。 (斉藤理/MOTIVA)