次期型GT-Rはどうなる!? キーマンに訊く日産とNISMOの未来とは。「正直、私たちにもいつ出るかはわかりません」
2024年1月12日から開催された「東京オートサロン2024」(千葉県・幕張メッセ)の会場で、気になる「NISSAN GT-R」の未来やNISMOブランドのあり方をキーマンにインタビュー! はたして、彼らはなにを答えたのか? 大谷達也がリポートする。 【写真を見る】これが最新!!! 超過激なGT-R NISMOなどを徹底チェック!!!(36枚)
期待以上のクルマを作らなくてはならない
東京オートサロン2024の日産ステージで熱いトークショーを繰り広げたばかりの田村裕志と川口隆志にインタビューする機会を得た。田村は日産GT-Rの元開発責任者にして現在は日産自動車のブランドアンバサダー、川口は日産自動車のチーフビークルエンジニアとしてNISSAN GT-Rの開発責任者を務めている。いきおい、話題が次期型GT-Rに及ぶのは当然のこと。奇しくも昨年秋のジャパンモビリティショーで日産はハイパーフォースという名のコンセプトカーを展示。最高出力1000kW(約1360ps)で4輪駆動のEVとされるハイパーフォースが、次期型GT-Rの姿を示しているのではないかと巷を賑わせたことは、皆さんもご存知のとおりである。 私が単刀直入に「ハイパーフォースは次期型GT-Rですか?」と訊ねると、田村は「ノーコメント」と、答えたが、サービス精神旺盛な彼がそのひと言でやりとりを終わらせるはずはなかった。 「まず、(GT-Rのようなクルマを)作り続けることの意義はメチャクチャわかっています。では、そのソリューションをどうするのか。EVなのか(シリーズハイブリッドの)eパワーなのか、はたまたガソリンエンジンなのか、いろいろな可能性のなかから選ぶのが現在の開発責任者である川口の役割です」 これを受けて、川口は次のように説明してくれた。 「ハイパーフォースはあくまでもコンセプトカー。それも、すぐさま商品化できるプロトタイプみたいなコンセプトカーでは全然ありません。モビリティショーの際にも、2050年を想定した生活のなかでモビリティがどう存在しているのかをテーマにしたアニメーションを流し、そのなかでハイパーフォースを登場させました。つまり、EVというのはひとつの表現であって、いますぐできる技術だけで作ったクルマではないことは理解してください」 川口もまた、これだけでは話を終わらせなかった。 「じゃあ、次のGT-Rがどうなるのか? というと、“わかりません”というのが正直な答えです。ただし、私はいまGT-Rの開発責任者を務めているので、考えてはいます。社内でも、たくさんのことを考えています。パワートレインに始まって空力とかタイヤとか、ありとあらゆるものを開発しているところです」 そこまで語ると、ひと呼吸置いてから、こう言葉をつないだ。 「でも、ただひとつわかっているのは、いまのお客さまが期待している以上のことをやらないといけないということ。たぶん、いい意味でお客さまの期待を裏切らないと、GT-Rにはならないんです。田村宏志が(現行型)R35 GT-Rの初期型コンセプトモデルを出したとき、メチャクチャ叩かれました。『なんで(クラッチペダルがない)2ペダルなんだ!』とも言われましたが、いまや2ペダルが常識です。そして、田村たちがお客さまの想像のひとつ先をいったから、GT-Rはこれだけ長く愛されてきた。それとおなじような技術をいま開発している最中なので、正直、私たちにもいつ出るかはわかりません」 川口の言葉を聞いていた田村が、課題は技術だけに限らないことをほのめかした。 「いまヨーロッパで議論されているEVを100%義務づけるかどうかは、政治的な問題でもあります。ただし、自動車に政治が絡むと、その国のエネルギー政策まで関係してくる。いっぽうで、GT-Rという製品がすでに存在している以上、日産自動車としてもそれをなかったことにはできないし、川口だってGT-Rを続けていきたいと思っている。でも、いやらしい話をすれば、企業としての対投資効果も考えなければいけない。儲かるのか、儲からないのか。もしも儲からないとすれば、足りない分を広告宣伝費として払ってでもやるのか。そういう企業の方針から政治の話までをすべて総合したうえで、経営者がどういう判断を下すかということです」 つまり、たとえ技術的な方針が固まっても、そこには経営判断も否が応でも関係してくる。ましてや、未来の自動車に対する規制が不透明な現在、10年、20年と愛され続ける“次期型GT-R”を作り出すのは容易なことではない。だから「わからない」と、田村と川口は答えたのである。