現代人は「家畜化症候群」!?…人類が「協調」することで体得してきた進化の”軌跡”とその”弊害”とは
人類の起源と大移動
アウストラロピテクスとは違って、初期の現生人類はすでにとても人間らしい見た目をしていた。フランス人復顔職人のエリザベト・デイネが制作した、ケニアのトゥルカナ湖で見つかった「トゥルカナ・ボーイ」(思春期前のホモ・エルガステル―これまでに見つかった初期人類の化石のなかで最も完全なものとされている)の復元像を見ると、この9歳の少年は悲しげな目と丸い鼻が特徴的で、裸の皮膚はところどころ明るい色の乾いた泥で覆われている。わずか数年前に南アフリカのライジングスター洞窟で発見されたばかりで、こちらも全身の化石が見つかったホモ・ナレディは、米国人古代造形家のジョン・ガーチーによって、ツンツン髭で鋭い目つきの成人男性として復元され、不満そうに口を歪めるその様子は、何かを観察しているかのようだ。 人類の起源がアフリカにあるという点は、今や誰もが認めている。その際、アフリカからの脱出は2つの段階―「出アフリカ1」と「出アフリカ2」―を経たと考えられている。 最初にアフリカを出たのはさまざまな古人類種で、のちにホモ・サピエンスも出アフリカに成功し、ユーラシア大陸の大部分に広がった。そして、ユーラシア大陸からアメリカ、さらにオーストラリアに到達したのである。それまでアフリカの東部に限られていた人類の生息域は、出アフリカ期に北アフリカにまで拡大し、その結果、ジブラルタル海峡を渡ってヨーロッパへの移動が可能になった。 その後、いつの日にかシナイ半島経由でコーカサス地方(アフリカの外で見つかった最古の人間の化石はジョージアのドマニシで発見された)にも移住し、そこからさらに現在のトルコを渡ってヨーロッパへと進んでいった。そして最終的には、南アジアと東アジアへも広がっていった。つまり、50万年前にはすでにかなり遠くまで移動していたということだ。 『ニーチェの考えは覆された…人間が「約束する能力」を手に入れたきっかけはまさかの「懲罰」だった!?』へ続く
ハンノ・ザウアー、長谷川 圭
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