センバツ2024 星稜 石川に優勝旗を OB、伏木海陸所属 坂本選手がエール /石川
◇きょう阿南光と ◇志賀で被災「野球で恩返し」 能登半島地震で液状化被害を受けた富山県高岡市の社会人野球・伏木海陸運送には、石川県出身の選手が3人在籍する。そのうち、震度7の揺れに見舞われた同県志賀町に実家がある坂本一馬選手(26)は、開催中の第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)でベスト8に進出した星稜(石川)のOBだ。28日に阿南光(徳島)と準決勝進出を懸けて戦う母校に「被災地に優勝旗を届けてほしい」とエールを送る。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 坂本選手は元日の地震発生時、帰省していた志賀町の実家で被災した。けが人もなく実家も無事だったが、家族で近くの小学校教室に避難。犬を飼っていたため交代で車中泊しながら数日間を過ごした。町内にある母方の祖父宅は完全に潰れたほか、壊滅的な被害を受けた親戚宅も多かったという。 同社は4日に仕事始めだったが、会社側の配慮でしばらく志賀町にとどまり、実家や親戚宅の片付け作業を続けて9日に初出社した。両親は坂本選手の体を気遣い「こっちのことは気にしなくていい」と言ってくれたが、毎週末に帰省して実家だけでなく親戚宅の片付けも手伝ってきた。 父の影響で小学3年から野球を始めた坂本選手だが、今回の被災体験で「改めてスポーツは多くの人に支えられてこそできるものだ」と実感したという。野球を通じて恩返ししたいという気持ちが大きくなった。 母校の星稜は今大会、順当に勝ち進みベスト8に進出。「被災地の方々に、一生懸命やる姿をお見せしたい」と話す山下智将監督(42)は高校時代の部長だったこともあり、活躍は大きな励みになっている。 同じ星稜OBの弟、龍平さん(24)は社会人野球のクラブチーム、マツゲン箕島(和歌山)の投手。地震の影響で正月に帰省することができず、再会はお預けとなった。いつも石川県から伏木海陸の試合に足を運んでくれる父のためにも、今年は何としても都市対抗野球大会に出場し、東京ドームで弟と対戦するのが夢だ。 自身の今季の公式戦は、富山市民球場で30、31日に開催される「第114回富山県社会人野球リーグ戦」から。地震での無理がたたったのか、2月に腰を痛めて試合に出場できる可能性は低いが、「いつか被災地に元気と勇気を届けられるようなプレーを」と一人黙々と練習を続けている。【青山郁子】