虎のソナタ 移籍でも残留でもファンは応援 原口も糸原も阪神愛する気持ちは変わらない
12日のプロ野球は〝FAラッシュ〟の一日だった。FA権行使の意思を在籍球団に通知できるのは13日まで。この日は期限前日とあって、FA権を保有する注目選手たちに動きがあった。 【写真】藤川監督、原口FA「僕としてはすごい理解ができる」 球界を代表する捕手の一人であるソフトバンク・甲斐は国内FA権を行使することが判明し、広島・九里は米大リーグ挑戦も視野に海外FA権行使を表明した。そして、われらが阪神タイガースでも、11日に国内FA権行使に向けた申請書類を球団に提出した原口が、報道陣の取材に応じ、決断した理由など思いを語った。 「原口さんは遠くを見つめる場面もあって、一言一言、言葉を選んで話してくれました。まだ出ていくと決まったわけではありませんが、タイガースのことは大好きだろうし、難しい決断だったと思います」 取材したトラ番サブキャップの原田遼太郎が報告してくれた。確かに、コメントを読んだだけでも原口の誠実さが伝わってくる。「決まったときには、言葉をみなさんに届けたいという気持ちです」と話していて、ファンを大切にしているんだなあと感じる。 いちファンとすれば、タイガースに残ってもらいたい気持ちもあるし、他球団で出場機会を増やし、活躍する姿を見せてほしい思いもある。本当に複雑だ。いずれにしても、病気やけがもありながら、競争が厳しいプロ野球の世界で頑張ってきたからこそ得られた権利なのだから、悔いが残らないようにしてくれたらいいと思っている。 タイガースからFA移籍した選手は、2017年オフにDeNA入りした大和が最後。大和は内外野守れるユーティリティープレーヤーとして、19年に自己最多の137試合に出場するなど移籍後も活躍した。タイガースの選手ではなくなったが、新天地で頑張る姿を誇らしく思っていた虎党もいたはずだ。仮に、原口が他球団に行っても、阪神ファンは応援し続けるだろう。 前日までバンテリンドームで侍ジャパンを取材していた広島担当の柏村翔は、九里が会見するという一報を受け、急きょ名古屋から広島に戻った。「九里選手は険しい表情をしていましたね。重い決断をしたことが伝わってきました。自分がチームを出ていこうとしていることを、ファンがどう思っているのか。そんなことも考えながら発言しているようにも感じました」。やはりファンあってのプロ野球。FA宣言が今まで応援してくれた人たちへの裏切り行為にならないように、慎重に言葉を選びながら会見に臨んだ印象を受けたという。 FA宣言する選手がいる一方、残留を表明する選手もいる。阪神・糸原は国内FA権を行使せず「このチームが好きだし、このチームでもう一回優勝と日本一を味わいたい」と話した。虎党にとってひと安心。サブキャップの原田は「糸原さんはすっきりした表情でしたね。ここ数年はふがいない成績だと本人もおっしゃっていましたし、残留を決断したことで、来季はより気合が入ると思います」と期待した。
FA宣言と残留。選んだ道は違うけれど、原口と糸原には共通していることがある。それは、タイガース愛。阪神を愛する気持ちはどこに行こうが変わらない。