「どうすればよかったか?」予告解禁、瀬尾夏美・想田和弘・森達也ら10名が推薦
映画「どうすればよかったか?」の予告編がYouTubeで公開。あわせて本作を鑑賞した著名人10名からコメントが到着した。 【動画】「どうすればよかったか?」予告編はこちら 本作は統合失調症の症状が表れた姉と、彼女を精神科の受診から遠ざけた両親の姿を、弟である監督の藤野知明が記録したドキュメンタリー。カメラを通した家族との対話は20年に及び、“どうすればよかったか?”という正解のない問いがつづられていく。予告編は姉の過去を振り返るシーンから始まり、現実を受け入れられない両親が彼女を自宅に閉じ込める様子、「分かりあえなさとともに生きる すべての人へ向けた 破格のドキュメンタリー」というテロップが収められた。 アーティスト・詩人の瀬尾夏美は「家の中に閉じ込められた困難に、社会は、他者は、何ができるのか。どうすればよかったのか。──わたしたちはこの映画から、対話を始めたい」と、映画作家の想田和弘は「解釈を拒む奇妙で厳しい現実を、そのままゴロっと差し出したような映画である」とコメント。映画監督・作家の森達也は「観終えてずっと考えている。どうすればよかったのか。でも答えはまだ見つからない。早く医療に繋げるべきとか拘束すべきではないとかのフレーズは浮かぶけれど、それが根源的な解だとは思えない。きっと他にある。だからもう少し考え続ける」と語った。 東風が配給する「どうすればよかったか?」は12月7日より東京・ポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・第七藝術劇場でロードショー。12月14日より北海道・シアターキノほか全国で順次公開される。なお11月27日にはシアターキノにて先行上映が決定しており、藤野と札幌学院大学名誉教授・二通諭の特別対談が行われる。詳細は劇場公式サイトを確認してほしい。 ■ 青山ゆみこ(編集 / ライター)コメント 家族の映像を記録し、公開することの可否を、息子に問われた老いた父の返答に、複雑な感情でなんともいえず胸がきゅうっと詰まった。 どこかほっと安堵したような気持ちにもなったわたしは、もしかするとその返答を「正解」だと感じた、あるいは「受け入れた」のかもしれない。 わたしは、いつも「正解」を求めてしまうのだな。自分にも、誰かにも。 ■ 伊藤亜和(文筆家)コメント 「どうすればよかったか?」という問いに正解を答えるのは、決して難しいことではない。 それでも人は必ずしも正解を選ばない。どうすればよかったか、みんな本当はわかっているはずだった。 鎖のかかった扉の内側から家族を見つめる静かな視点。 終わっていく物語は私たちにもういちど問う。一体、どうすればよかったか、と。 ■ インベカヲリ★(写真家 / ノンフィクション作家)コメント 姉の病気を認めないことで成立する「家族」のあり方。おそらく多くの機能不全家族にも通じる矛盾であり、その矛盾をはっきりとカメラに残したドキュメンタリーである。 ■ 瀬尾夏美(アーティスト / 詩人)コメント 姉、弟、父、母。 一緒に暮らしているがゆえに、どうしようもなく孤立していく人たち。 聞いてる? 聞こえてるよね。 25年間にも及ぶ、すれ違う会話の集積が問いかける。 では、家の中に閉じ込められた困難に、社会は、他者は、何ができるのか。 どうすればよかったのか。──わたしたちはこの映画から、対話を始めたい。 ■ 想田和弘(映画作家)コメント 解釈を拒む奇妙で厳しい現実を、そのままゴロっと差し出したような映画である。だからか、どう評していいのか分からない。観た後しばらく茫然とするしかなかった。 ■ 永井玲衣(哲学者)コメント 映像はふるえている。目もくらむ年月を重ねたままならない日々と家族が、そこにうつっている。求めることができなかった助けの声が、問いのかたちとなって社会に手渡された。映像を観たいま「あなたたちはこうすればよかった」ではなく「わたしたちはどうすればよかったか」という思いが離れない。 ■ 星野概念(精神科医など)コメント ある時点よりも先の未来の物語には、常に無数の筋があります。 その時点での環境、不安、希望、知識、出会いなど、様々なものに影響されながら、その人や周りの人たちは一つの筋の物語を紡いでいきます。 人生の物語はどの時点でも道半ばで、いくらでも振り返ることはできるけど、歩んでいる筋のよしあしに正解はきっとありません。 どうすればよかったか? 問いは壮大。考え続けることは楽ではない。 けれど、とても稀有な記録、記憶をたどりながらそれを一緒に考えるような鑑賞体験は、とても貴重で意義ある時間に感じられました。 ■ 松尾潔(音楽プロデューサー / 作家)コメント これは私たちの映画だ。「両親は玄関に鎖と南京錠をかけて姉を閉じ込めた」と聞けば、常識的ではない家族の記録と早合点しそうになるが、事はそうシンプルではない。統合失調症の「姉」に大多数の人と異なる点があるのは確かだが、常識的ではないかといえば違う。そろって医者の「両親」は常識人であることに執着し、常識的ではない日々にたどり着いた。では、そんな家族を撮りつづけた監督のふるまいは常識的といえるか。誰にとっても他人事ではない人生がここにある。 ■ 森達也(映画監督 / 作家)コメント 観終えてずっと考えている。どうすればよかったのか。でも答えはまだ見つからない。早く医療に繋げるべきとか拘束すべきではないとかのフレーズは浮かぶけれど、それが根源的な解だとは思えない。きっと他にある。だからもう少し考え続ける。 ■ 森直人(映画評論家)コメント カメラを持った男──弟であり息子でもある彼は、「撮る」ことでいかに自らの家族と、そして世界と切り結ぼうとしたのか。 記録されることがなかったかもしれない場所で、「ともちゃん」と呼ばれる男から、人間探究の目が立ち上がってくる。我々はこの目の発動を映画と名付けているのではないか。カメラの前で老いた父親と真っ直ぐ向き合う藤野知明監督の姿が、この映画の決定的な余韻として残っている。 (c)2024動画工房ぞうしま