井上尚弥への“あらぬ批判”は「浅はか」 米興行関係者が国内の論争を一喝「イノウエはアメリカにいる必要はない」
敵なしの快進撃を続ける井上尚弥(大橋)は、“ボクシングの本場”を拠点とすべきか否か。日本が生んだ偉才の価値を巡る論争が波紋を広げた。 【動画】戦慄の45秒間 世界を震撼させた井上尚弥の圧倒的KOシーンをチェック 物議を醸す議論の発端となったのは、世界の頂に立ったレジェンドの指摘だった。 井上とルイス・ネリ(メキシコ)による東京ドームでの一大決戦が迫る4月12日(現地時間)に米ボクシング専門YouTubeチャンネル『ProBox TV』に出演した元世界ウェルター級王者2団体王者のショーン・ポーター(米国)氏は、「ボクシング界で、世界最高のスターになりたいならこっち(米国)での試合が必要だ」と断言。そして、「海を渡り、アメリカに来て、アメリカ人を倒して、ファンに注目してもらわなければならない」と持論を続けた。 いわば、「数多の名勝負が生まれたボクシング本場で、アメリカ人の猛者を破ってこそ一人前」という意見である。この上から目線とも取れる提言はハレーションを広げ、5戦連続で日本開催を続ける井上に対する批判的な意見も目立った。 もっとも、井上が「今や軽量級の本場はここ日本にある。試合が見たいのなら日本に来ればいい」(Xの投稿より)と明言するように、彼の興行は、目に見える結果を出している。来る5月6日に実施予定となっているネリ戦は、放映権料を含めたゲート収入だけでも2800万ドル(約42億8400万円)に達すると言われているほどだ。 さらに言えば、近年のボクシング界は、イギリスやサウジアラビアなど世界各国でメガイベントが開催されている。かつてのようにアメリカが市場を独占しているという状況でもない。 そうした背景を踏まえ、辛辣な反論を口にするのは、井上との契約を締結している米興行大手『Top Rank』のトッド・デュボフ副社長だ。同氏は米メディア『Boxing Scene』において「『スターになるためにはアメリカに来る必要がある』なんて言うのは、ちょっとしたナルシスト的な意見だ。そんなのたわごとだ」と断言。そして、日本で異彩を放つ怪物の秘める価値を独特な視点から訴えている。 「我々は明確なビジョンを持っている。白黒写真だった頃、ビートルズはアメリカで成功するために飛行機ではるばるアメリカに来なければならなかった。ローリング・ストーンズもアメリカに来た。だが、そうした視点は今の世界ではとても浅い見方だ。 アメリカにいる必要はないんだよ。今の世界はとてもフラットで、非常に密接になっている。イノウエが試合をすると、あらゆるプラットフォームで瞬く間に世界的なトレンドになる。彼は人の心を響かせるんだ。我々はそれをライブで発信し、誰もがそれを見ることができている」 グローバル化が進むなかで、母国を拠点する必要は「ない」としたデュボフ氏は「スーパースターになるためにアメリカに行くという考えは身勝手だ」と改めて訴えている。 アメリカで試合をやるべきという論争は今後も続くだろう。そうしたなかで開催されるネリ戦は、井上にとって喧騒を静める意味でも重要な一戦となりそうだ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]