なぜレッドブルはホンダとタッグを組む道を選んだのか?
ワークス体制とは、PUを製造するマニュファクチャラーから独占的または優先的に供給される体制のことで、その体制がとられているチームをワークスチームという。現在のF1ではメルセデス、フェラーリ、ルノーという自動車メーカーが運営するチームがそれにあたり、ホンダから独占供給を受けているトロロッソもワークス体制だ。これに対して、対価を支払ってPUの供給を受けているチームをカスタマーチームと呼び、レッドブルがそれにあたる。 レギュレーションで、PUを製造するマニュファクチャラーはワークスチームとカスタマーチームに同じPUを供給することが義務付けられているが、ワークスチームはスペックが新しくなったときなど、PUを優先的に供給されるというメリットがある。実際、カナダGPでフェラーリは新スペックを投入したが、それは自チームのフェラーリの2人のドライバーのみに投入された。 メルセデスやフェラーリと互角の戦いを演じたいレッドブルにとっては、このままルノーのカスタマーチームでいるより、ワークス体制になることが重要なのである。 もちろん、レッドブルからラブコールを受けているホンダにとっても、「来季は2チームへPUを供給することで、より多くのデータ収集が可能となり、開発のスピードアップに繋げることができる」(八郷隆弘/本田技研工業株式会社代表取締役社長)だけでなく、いますぐにでも「勝てる」チームであるレッドブルと組むことは、ホンダのF1活動を支えて行くうえで魅力的なことだったに違いない。 「カナダGPに投入される新スペックの性能を見て、最終的な判断をしたい」と語っていたレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、カナダGPを終えて「ホンダの新しいPUのパフォーマンスは印象的だった」と評価していた。 ホンダと交渉していたレッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコは、ホンダとの提携に際して次のようにコメントしている。 「レッドブル・レーシングとトロロッソにとって、新たな時代の幕開けだ。ここまでホンダが見せてきた努力と進歩、そして我々とも通じる部分が多い勝利に対する信念は、素晴らしいものだと感じている。来季は3者が強く結びつく形でシーズンを戦うことになるが、ホンダと一緒に仕事をすることを、非常に楽しみにしている」 その思いは、日本のモータースポーツ・ファンも同じだろう。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)