「AIが電話番…!?」 年始で超多忙な飲食店の救世主『AI副店長』の実力を試してみた
年の始めといえば1年で最も飲む機会の増える季節だ。とくにコロナが本格的に明けた昨年末からは繁華街の人出は目に見えて増え、飲食店も大盛況。予約しようとお店に電話をかけても、忙しくて手が回らないのかなかなか出てくれず、イライラした経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。 【図解】AI副店長はこうやって予約をとる!! だが、どんなにお店が忙しくてもAIが音声で電話対応してくれて予約まで取ってくれる『AI副店長』というシステムがあるという。さっそく電話してみた。 「お電話ありがとうございます。○○屋でございます。ガイダンスに従ってご希望の番号を入力してください。新規のご予約は“1”を、 ご予約内容の確認や変更、その他お問い合わせにつきましては“8”を入力してください」 受話器から聞こえてきたのは、よくカード会社や携帯のカスタマーサービスなどに電話したときに出てくる機械音声だ。ちょっと拍子抜けしながら1を入力する。 「ここからの質問には声を出してお答えください。ご用件は新規のご予約ですか。“はい”または“いいえ”でお答えください」 えっ、ここからは声で応答するのか。一瞬、どうしたらいいかわからなくなっていたら、AIから叱られてしまった。 「もしもし。新規のご予約でよろしいですか。よろしければ“はい”キャンセルなどの別要件は“いいえ” とお答えください」 ──はい。すみません(汗) 「お席のみの予約でよろしいでしょうか」 ──はい。 「ご希望の日時を“今日の20時”のように教えてください」 「今日の20時」と指定すると、続けて人数を聞かれたので「4人」と答える。 「ご予約の人数は4名様でお間違いないでしょうか」 ──大丈夫です。 「ありがとうございます。お席をお調べします」 すると、思わぬ答えが。 「ご希望の時間は、あいにく空席がございません。20時30分から120分でしたら、お席のご用意が可能です。12月○日の20時30分から、4名様で120分のお席をお取りしてもよろしいでしょうか」 なんと、満席だけど30分ずらせば入れると教えてくれた。はい、と返事をすると、次に名前と電話番号を聞かれる。さらに何か言いたいことがあれば、音声メッセージを入れることもできるようだ。「特にないです」と回答。 「お席の予約が完了しました。ご予約内容をショートメッセージでお送りします。本日のご来店をお待ちしております」 これで予約できたようだ。この間約3分。よくある機械音声の応答だと、アナウンスがやたらと長かったり、レスポンスが遅くていつも時間がかかる印象があるのだが、それよりはスムーズな印象だった。 この『AI副店長(正式名称はGATE AIコール)』を開発した㈱イデア・レコード取締役の左川裕規氏に話を聞いた。 「弊社は飲食店特化型のコールセンターを元々構えていて、創業以来の事業で技術の進化に適応しながら成長しています。業界では元々IVR(インタラクティブ ボイス レスポンス)というサービスがありました。ご存じの番号を選択してもらってボタンで入力してもらうものです。 AIで音声を聞き取ってそれをやるというのは技術的になかなかできませんでしたが、近年AIの技術が進化してそれが可能になりました。コロナ禍が本格的に明け、インバウンドが好調なこともあり、急に忙しくなって人材不足に悩む飲食店が増えたことなどもサービスを開始した背景にあります」 少ない人数で店を回しているためになかなか電話に出られず、結果、新規の予約が減ってしまうといった悩みが飲食店には多いのだという。 『AI副店長』はそもそもイデア・レコードが提供していた『GATE』という予約台帳サービスとAIによる音声サービスを組み合わせたもの。お客の声によるリクエストをAIが解析してデータベースを参照しながら予約をアレンジするシステムだ。では、開発するうえでどういったところに苦労したのだろうか。 「やはり人間が対応したほうが、細かい調整ができるので予約の成約率はあがるんです。人間だったらできる調整部分を、AIでどこまで再現できるのかというところにこだわって作りました。ただ、AIコールでできることと、できないことがあるので、できない部分はショートメールや人が対応するように、分岐パターンを作っています。 できないことで言えば、似たような名前が多くてグルメ媒体によってコピーが変わる、コースの名前を正しく認識するのは難しいです。あとは飲み放題がグレードアップするクーポンや、幹事1名割引のクーポンなどの組み合わせを、音声で正しく認識をすること、間違いなく予約を取れるように設定をするというところも現時点では難易度が高いです。 今はそういう場合はURLをショートメールでお送りして、フォームで選択していただくというふうにして対応しています」 また、既存の予約の変更、例えば30名の予約を20名に変更したいとか、鍋の種類を変更したい場合も、現時点では間違えるというリスクを回避するために、ショートメールで対応しているそうだ。 結果、現時点ではAIだけで対応できるのは新規予約の一部だが、記者が実体験したように予約の時間調整はしてくれる。また、当日お店が満員だった場合なども、その旨をアナウンスしてくれるという。 現在AIで対応するのが難しい部分に関しても、今後はできるようになっていくのだろう。だが、実は現時点でも飲食店側にとっては、電話を取ること自体を減らせるという点も大きなメリットなのだ。 「われわれがコールセンターをやってきた経験からすると、店舗にかかってくる電話のうち新規の予約は3割ぐらい。道案内や忘れ物は意外と多く、あとは予約の変更やコースについての問い合わせなど、予約以外の電話の割合は多いんです。 そこでわれわれは分岐パターンを作って、どんな内容の電話を店舗に転送するのかなどを上手く振り分けられるように、店舗の営業スタイルに合わせて細かく設定しています。忘れ物のお客様などは、すぐに店舗に確認したいケースも多いので、すぐに店舗の電話が鳴るように設定をすることもできます。 やっぱり、取ってみるまで何の電話かわからないのが一番困る点でしょう。忙しい時に長い電話に捕まってしまって、5分も10分も時間を拘束されることもあるので」 AIコールは12月にサービスを始めたばかり。忘年会シーズンはすでに多くのお店は予約が埋まっていたため、AIコールでの予約による予約の成約率は、まだ現在検証中だという。だが、導入した店舗からは「新規の予約を断る電話を、いちいち取らなくて済むのがありがたい」という声がすでに届いているという。 人手不足に悩む飲食店にはAIが強い味方となってくれるかもしれない。
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