追悼・佐川満男さん 出演映画『あまろっく』公開とともに逝く
【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1175回】 シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。 4月20日、歌手で俳優の佐川満男さんが4月12日に逝去されていたことが公表されました。 享年84歳。訃報が日本中を駆け巡った4月20日は、出演映画『あまろっく』が全国の映画館で封切られた翌日。そしてこの世を去られた4月12日は、映画の舞台となった兵庫県尼崎市での先行上映初日でした。映画館に足を運んで、スクリーンに映し出される佐川さんの生き生きとした姿をご覧になったばかり……という人も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、佐川満男さんのご活躍を振り返るとともに、遺作となった『あまろっく』でみせた俳優・佐川満男の魅力に迫ります。
歌手として、俳優として…… 波乱の人生を送ったレジェンド
「無情の夢」「今は幸せかい」「かんにんしてや」などのヒット曲で知られ、紅白歌合戦に4度出場した佐川満男さん。 生前、佐川さんは元妻の伊東ゆかりさんのことを「ヒット曲が多くて(同じ歌手として)敵わない」と言っておられたようですが、語りかけるような甘い歌声は、いつ聴いても魅力的。昭和歌謡を語るにおいて欠かせない歌手と呼べるでしょう。 また俳優としては、味のある演技で多くの映画・ドラマに出演。特に、大阪制作の連続テレビ小説では、様々な役柄で度々出演する“常連俳優”として知られていた佐川さん。ドラママニアの間では、“常連”と呼ばれる役者さんたちが、どの場面で、どんな役柄で登場するかが“通な見どころ”となっていますが、佐川さんも、連続ドラマ小説ファンに愛される俳優のひとり。近年は「わろてんか」(2017年)や「おちょやん」(2020年)、「カムカムエヴリバディ」(2021年~2022年)などで、その存在感を発揮してらっしゃいました。 関西弁を生かした人間味あふれる演技で、その佇まいはさながら「近所に住んでる気さくなおっちゃん」。一方的な主観となってしまうかもしれませんが、これほどまでに佐川さんに親しみを感じていたのは、幼い頃に見たテレビ番組の影響もあるかもしれません。作曲家の中村泰士さんや上岡龍太郎さんといった同世代の方々と繰り広げる軽妙なトークが強く印象に残っており、大阪出身の私にとっては、まさに“関西レジェンド”といった存在でした。 そんな佐川満男さんの遺作となったのが、映画『あまろっく』です。