左から三宅唱、松村北斗、上白石萌音。

第74回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に招待された「夜明けのすべて」のインターナショナルプレミア上映が行われ、ダブル主演を務めた松村北斗と上白石萌音、そして監督の三宅唱が舞台挨拶、Q&A、囲み取材に参加した。 【写真】レッドカーペットを歩く松村北斗、上白石萌音、三宅唱 瀬尾まいこの小説をもとにした本作は、パニック障害とPMS（月経前症候群）を抱えた者同士が、少しずつ互いの殻を溶かし合っていくさまを描いた物語。パニック障害のためにさまざまなことをあきらめている山添くんを松村、月に1度PMSで苛立ちを抑えられなくなる藤沢さんを上白石が演じた。 2月21日の昼間から現地でのメディア取材に応じた松村、上白石、三宅。シックで艶やかなジャケットをまとった松村はベルリンに到着した感想を聞かれると「東京の小さな街で撮影した映画なので、渡航してようやくこの街の風景を見て、やっと今世界に届いているんだと感動し始めています」と語る。エレガントな黒いドレス姿を披露した上白石は「まさか人生の中で参加できると思っていなかった場所に、自分が大好きで大切に思っている作品を通して来ることができたのは何よりうれしいです」と喜んだ。 18世紀末に建造された劇場Delphi Filmpalastでの上映会には国籍・年齢・性別を問わず多くの観客が足を運び、670席が満席に。上映後には会場中に大きな歓声と称賛の拍手が響き渡り、同席した松村、上白石、三宅をたたえた。熱気冷めやらぬ中、3人はそのままQ&Aに登壇。観客から寄せられる質問に時間が許す限り回答した。 PMSやパニック障害という“生きづらさ”を抱えた男女を演じた松村と上白石。「これらのテーマに関心を持ったから、この映画に参加したのか」という質問に対して「この映画を通してすべてを知ることは不可能だけれど、一歩、半歩でもその症状に対して寄り添ってくれたらいいな、という思いは強く持ちながら演じていました」と松村が答える。上白石は「まず初めにお聞きしたいんですが……」と切り出し「日本では女性の生理の話を男性とはしづらいのですが、それはこちらも一緒ですか？」と問いかけた。観客からの「そうでもない」という反応を受け、上白石は「日本もそうなるといいな、そういうきっかけにこの映画がなればいいな、と思っています」と満面の笑みを浮かべる。 囲み取材にて、観客の反応を「想像以上だった」と振り返った3人。三宅は「上映後、お客さんから力強い拍手をいただき感激しましたし、2人のキャラクターを友達みたいに愛して観てくれていたんだと感じました」と振り返る。松村は「この映画は、いろんな人の人生がそのまま映し出されている映画なのですが、人生のしんどいことも笑えることも、お客さんが一緒になって感じてくれている空気が伝わってきました」と述懐。上白石は「会場の反応が鮮やかで本当にびっくりしました」と話した。 さらに松村は「お客さんの観方がすごくプロだなと思い、大変心地よかったです」、上白石は「国籍や人種が違ういろいろな方がいましたが、みんな同じところで笑ったり、張り詰めたりしていて、文化や言葉を超えた共通の何かがあるんだな、と感じました」とベルリン国際映画祭初参加をしみじみと噛み締める。Q&Aの感想を聞かれると「もっとこの映画のことを知りたいんだな、という質問ばかりで、さらにこの映画への自信が湧きました」と松村が答え、上白石は「たくさん手が挙がっていてうれしかったですし、本当にみんなに愛されている映画祭なんだと感じました」とコメントした。 また、2019年に「きみの鳥はうたえる」、2022年には「ケイコ 目を澄ませて」でベルリン国際映画祭に選出された三宅は「過去2作より今作のほうが“日本”というものを客観的に見る経験になった気がします。登場人物たちが“日本”という目に見えない縛りの中で生きているな、ということを、海外の方の反応を見たからこそ感じた部分はありました」と述べた。 「夜明けのすべて」は全国で公開中。 (c)瀬尾まいこ／2024「夜明けのすべて」製作委員会