大自然と心を一つにする禅坊 建築家・坂茂氏が設計 淡路島 探訪
本州から明石海峡大橋を車で渡って10分ほどの兵庫県淡路島北部の山あい。まるで木々が生い茂る緑の大海原を突き進む巨大な木造船のような建築が目に飛び込んできた。 【写真】森の中にせり出したウッドデッキ。自然との一体感を出すため筋交いがなく、景色を見渡せる空間でヨガや禅体験ができる 今年、第35回高松宮殿下記念世界文化賞建築部門賞を受賞した坂茂氏が手掛けた「禅坊靖寧(ぜんぼうせいねい)」。 日本の子午線である東経135度の地で、ヨガと禅体験ができる宿泊施設として2年前にオープンした。 森の中に突き出しながらも、山の稜線(りょうせん)を超えないように造られているため、森に浮いているようにも、埋もれているようにも見える。 坂氏が意識したのは「建築を自然と対比させながら、同時に溶け込ませること。自然と対比する幾何学的な建築を置き、そのコントラストにより自然を引き立たせる効果」を狙ったという。 2階の全長約100メートルのデッキに立つと、木のぬくもりと香りに包まれる。建物の約8割が国産のマツやスギなどで組み上げられている。 目の前には、秋を迎えた淡路島の美しい景色が広がっていた。空気は澄み切って、どこまでも青く広い空を雲が現れては流れ消えていった。心地よい空間に、一日中過ごしていたい気持ちに駆られた。 自然に溶け込みながら、自然を引き立てる建築-。 その言葉の意味が、少し分かったような気がした。 (写真報道局 矢島康弘)