終点まで丸4日をかけて北米大陸を横断 カナダの旧紙幣に描かれた看板列車、カナディアン乗車記①「鉄道なにコレ!?」【第57回】
脱炭素化が急務の中、二酸化炭素(CO2)排出量が多い航空機の利用を「フライトシェイム(飛び恥)」と呼ぶ向きもあるヨーロッパで急拡大しているのが夜行列車だ。カナダの都市間旅客鉄道を運行するVIA鉄道カナダは、3区間で夜行列車を走らせている。代表格が最大都市トロントと西部バンクーバーの約4466キロを停車時間も含めると丸4日、約97時間をかけて走る「カナディアン」だ。乗り込むと五大湖の一つのヒューロン湖や穀倉地帯、カナディアンロッキーの優美な山容などと変わりゆく車窓が飽きさせることがなく、他の乗客や乗務員との会話でも驚きの連続だった―。(共同通信=大塚圭一郎) カナダの「古希」迎える旧型客車、先住民鉄道で今も現役 「鉄道なにコレ!?」第42回
※音声でも解説しています【きくリポ・鉄道なにコレ!?特別編12】「丸4日をかけて北米大陸を横断、カナディアン乗車記(前編)」(共同通信Podcast) 【VIA鉄道カナダ】カナダの都市間旅客列車を運行する国営企業。本社は東部ケベック州モントリオール。1977年に設立され、現在はともに貨物鉄道に特化しているカナディアン・ナショナル鉄道(CN)、カナディアン・パシフィック鉄道(現在のカナディアン・パシフィック・カンザスシティー)が切り離した旅客鉄道事業を引き継いだ。カナダ10州のうち東部ニューファンドランド・ラブラドル州、プリンスエドワードアイランド州を除く8州を走る。本業の損益を示す営業損益は毎年赤字で、連邦政府による補助金などで穴埋めしている。2022年12月期決算の本業の損益を示す営業損益は3億5430万カナダドル(約390億円)の赤字だった。CNなどの貨物鉄道会社の線路を借りて列車を走らせているため、貨物列車によってダイヤに影響を受けることが多い。
▽夜行列車の〝台風の目〟「ナイトジェット」 夜行列車が急拡大しているヨーロッパで〝台風の目〟となっているのがオーストリア連邦鉄道の国際夜行列車「ナイトジェット」だ。8カ国を走っており、オーストリアの首都ウィーンとフランスの首都パリ、ベルギーの首都ブリュッセル、スイス・チューリヒなどを結んでいる。 新型車両も導入し、2023年12月にウィーン―ドイツ・ハンブルクなどで営業運転が始まった(詳しくは本連載第23回「欧州に“夜汽車ブーム”が再来した理由」)。 これに対し、北アメリカ大陸で夜行列車を死守して外国人旅行者を呼び込む柱の1つと位置付けられてきたのがVIA鉄道カナダのカナディアンだ。 ▽カナダ唯一の大陸横断列車、かつては紙幣にも カナディアンは旅客鉄道ではカナダ唯一の大陸横断列車であり、カナダの旅客列車を代表する看板列車だ。トロントの中央駅に当たるユニオン駅とバンクーバーのパシフィックセントラル駅と結ぶ。