宝塚元トップスター、アンジェラ・アキのオリジナル曲に挑戦…望海風斗初アルバム「笑顔の場所」
「シンプルな自分の声を皆さんに届けることができた」。柔らかな笑顔に手応えがにじむ。宝塚歌劇団で雪組トップスターを務め、2021年に退団した望海風斗（のぞみふうと）が、ポップスと向き合った初アルバム「笑顔の場所」を出した。オリジナル曲から名曲のカバーまで歌いこなし、表現の幅を確実に広げつつある。（池内亜希） 【画像】望海風斗
オリジナルや名曲カバー…「レパートリー増やす」
退団後も、高い歌唱力を生かしてミュージカルを中心に活躍。役柄として歌うことが自然で、長く「オリジナル曲を出すという発想はなかった」という。しかし、アルバムでは収録曲のうち2曲がオリジナル作品だ。
「Breath」は、アンジェラ・アキが作詞・作曲を担当した。制作にあたって「これまでどこにもはき出してこなかった気持ちを伝えてみよう」と決意し、アンジェラと話し合いを重ねた。
宝塚を去って3年。がむしゃらに走りながらも、拭えない不安があった。「男役というベールがなくなり、自分について考えることが増えたからか、何のために頑張っているのかわからなくなる時がある。いつか空っぽになっちゃうのではとも思う」。でも、そんな心もとなさに駆られるのは自分だけではないはず――。
揺れ動く思いを映し出した曲には、はかなくも壮大な雰囲気が漂い、語りかけるような歌声が優しく響く。
もう一つのオリジナル曲「ミチシルベ」は、GReeeeNから名を変えた「GRe4N BOYZ（グリーンボーイズ）」が提供。プロデューサーの武部聡志から「『Breath』とは全く違うものも歌ってみたら」と提案されて挑戦し、勇ましく聞き手を鼓舞する曲に仕上がった。
どちらも、ミュージカルで歌ってきた楽曲とは、テンポ感も、歌詞に盛り込まれる言葉の数も大きく異なる。「力を抜きながらも、言葉を全部こぼさずに伝えていく。ポップスにおけるグルーブ感の大事さがよくわかりました」
7曲のカバー曲も、「田園」（玉置浩二）や「翳（かげ）りゆく部屋」（荒井由実）など長年人気を集めるポップスばかりだ。
「これからも新たな出会いを重ねるのが楽しみ。どんどんレパートリーを増やし、いつかオーケストラとコンサートをすることが夢です」
