侍選手が「監督、近っ!」栗山英樹の次元の違う熱量の源とは?“落ちこぼれ選手”から“世界一の監督”へ、人生を切り開いた「信じ切る力」
昨年 3 月に行われた WBC(World Baseball Classic)にて、侍ジャパンを3大会ぶりの優勝へと導いた栗山英樹前監督。野球ファンならずとも話を聞きたくなる存在です。この人の指導力や求心力を盗むことができれば、会社の後輩や自分の子どもをスーパースターに育てることができるかもしれないのだから。 【画像】いくつになってもシュッとしてる……栗山英樹さん(63歳)のスーツスタイル 人が大きく成長するとき、誰かの「信じ切る力」が必要になると栗山さんは語ります。最新の著書『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』では、豊富な経験に裏打ちされた実践的な人生論が綴られており、向上心を燃やしたいすべての人にインスピレーションを与えてくれる一冊です。インタビュー前編では、揺るぎない信念が確立された背景に迫ります。 栗山英樹 1961年生まれ。東京学芸大学を経て、1984年にドラフト外でヤクルト・スワローズに入団。1989年にはゴールデン・グラブ賞を獲得するなど活躍したが、1990年に怪我や病気が重なり引退し、スポーツジャーナリストに転身した。2011年に北海道日本ハムファイターズの監督に就任。翌年パ・リーグ制覇、2016年には日本一に。2022 年から日本代表監督に就任、2023年のWBCでは世界一に輝いた。2024年からファイターズ最高責任者であるチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)を務める。
ダメな選手だった僕は、誰かに信じてほしかった
――――WBCで不振に苦しんでいた村上宗隆選手を信じて使い続け、準決勝での劇的な逆転サヨナラ打に導いた栗山さん。今回の著書のタイトル『信じ切る力』を象徴するエピソードですが、その信念の原点となった出来事を教えてください。 栗山英樹さん(以下、栗山):ご存知ない方も多いと思いますが、もともと僕は“落ちこぼれ”の選手としてキャリアをスタートしたんです。プロテストを受けてヤクルトスワローズに入団したのですが、同期の新人選手たちは僕よりも段違いで野球がうまかったので、開幕前の合同自主トレの段階で自信を失ってしまって。初歩的な動きもできなくなるくらい、精神的に追いつめられていました。そして、もがき苦しんでいる僕に声をかけてくれたのが二軍監督だった内藤博文さんです。 「プロ野球は一軍に上がらないと認められない競争社会だ。でも、俺はそんなことはどうでもいい。お前が人間としてどれだけ大きくなれるかのほうが、俺にはよっぽど大事なんだ。明日の練習で今日よりほんのちょっとでもうまくなっていればいい。だから他の選手と自分を比べるな」。当時、内藤さんが語りかけてくれた言葉は、僕の指導者人生の原点になっています。