イラン大統領選、改革派と保守強硬派の決選投票へ 投票率が勝敗握る
イラン大統領選は29日、開票が行われた。イラン内務省によると、いずれの候補者も当選に必要な過半数を得票できず、7月5日に上位2候補による決選投票が実施されることが決まった。決選投票に進むのは、得票で首位だった改革派のペゼシュキアン元保健相(69)と次点の保守強硬派、ジャリリ元最高安全保障委員会事務局長(58)。大統領選の決選投票は2005年以来。 【写真で見る】ライシ大統領が乗っていたヘリコプター ペゼシュキアン氏は知名度が低く、当初は保守強硬派の有力候補であるジャリリ氏とガリバフ国会議長(62)の事実上の一騎打ちになるとみられていた。だが、両氏の間で支持層の票が割れたうえ、指導部の強硬路線に対する批判票がペゼシュキアン氏に流れ、得票を伸ばした形だ。ただ、体制に不満を持つ国民の多くは棄権したとみられ、投票率は21年の前回選(48・8%)を下回り、1979年のイラン革命以来、最低の約40%だった。決選投票では、投票率が勝敗のカギを握ることになりそうだ。 今回の選挙は、ライシ大統領が5月19日、北西部の東アゼルバイジャン州をヘリコプターで移動中に墜落死したことを受け、実施された。80人が立候補を届け出たが、最高指導者ハメネイ師が任命した聖職者らでつくる「護憲評議会」が立候補資格を事前に審査。保守強硬派5人と改革派1人の計6人の出馬が認められた。 内務省によると、投票総数は約2453万票。得票数はペゼシュキアン氏が約1041万票(42・45%)▽ジャリリ氏が約947万票(38・61%)▽ガリバフ氏が約338万票(13・78%)――だった。 イランは13~21年、穏健派のロウハニ政権が米欧などとの対話を進めてきたが、21年に保守強硬派のライシ師が就任。イランへの経済制裁を続ける米欧と対立し、中露との関係を深めている。国会や重要な行政機関は保守強硬派がおさえているほか、国政の最終決定権は最高指導者ハメネイ師にあり、仮にペゼシュキアン氏が当選しても、大きな変革は期待できないとの見方が強い。 ただ、ライシ政権下では22年、ヘジャブのかぶり方が不適切だとして拘束された女性が急死したことを受け、大規模な反政府デモが広がり、強硬な弾圧を受けた。こうしたことへの不満がペゼシュキアン氏支持という形で表れたとみられる。 一方、イランメディアによると、南東部シスタン・バルチスタン州で29日未明、投票箱を運んでいた車が銃撃を受け、治安関係者2人が死亡した。実行犯の身元や動機などは不明だ。【カイロ金子淳】