球界大御所がエンゼルス大谷翔平に警鐘「二刀流無理。選手生命縮める」
ロサンゼルス・タイムズ紙は「エンゼルスが得た余剰価値は相当なものだ。だがリスクも存在する。大リーグでは、1924年以来、誰も15試合以上に野手として先発出場した投手は存在しない。投手が、先発後に回復時間を必要とするためで、打者としてのトレーニングや、試合間隔のバランスが難しくさせている」と二刀流の難しさを指摘した。 ESPN.comも、「大谷は、ただの選手契約ではない。投打両方で、様々な才能にあふれた選手だ。しかも、23歳で他国からやってくる。すべてがユニーク。大谷は今メジャーに別の道に火を灯そうとしている」と、二刀流挑戦を評価しながらも、いくつかの問題点を指摘した。 ひとつは広岡氏が指摘するようなチーム内外への影響である。 「彼が投げれば、それはイベントになる。彼が打ってもイベントになる。アジアでは大きな話題となることは間違いない。プレーオフのような雰囲気とまでは、言わないが、突然、周りにメディアが15社、20社どころではなく50社近く現れることになる。敵地で、通常は自チームの番記者は5人もいないかもしれないが、大谷のおかけで、35人、40人となる。これらのすべての動きに準備を整える必要がある。今までの典型的な1日とは何かが異なる」 そして、クラブハウスに与える影響も、こう危惧する。 「おそらく大谷の新しいチームメートは、彼がチームの成功に影響を及ぼすこと、彼の取り組みの難しさに敬意を表して熱狂的に歓迎するだろう。しかし、注目されるフィールドで苦労すれば、不満や反発が起こる危険性は常にある。彼が成功してチームを取り巻く話題が大谷一色になったとしても同じことが当てはまる」 一方で、「大谷の誠実な性格からすると、そういう軋轢は生じない」という好意的な見通しも記されていたのだが、広岡氏の考える不安要素は、確かに存在するのだ。
また同記事では、「トレーニングや医療スタッフの重要度」についても、ジャイアンツやドジャースの元ヘッドトレーナーで大リーグの医療調査コンサルタントを務めるスタン・コンテ氏への取材を元に問題提起されている。 同トレーナーによると、二刀流選手の身体的影響についての研究はメジャーでは進められておらず、「最も近い比較としては、投打で活躍した大学のエリート選手になるだろう。だが、彼らは年間、50、60試合程度で162試合はプレーしないので参考にはならない。大谷のスケジュールとルーティンについては、常に監視、警戒が必要となる。6カ月にわたって二刀流でプレーするならば身体的な負担はどの程度になるだろうか」という。 同トレーナーは、「体調管理の面での最も大きな課題はプレー時間と回復時間だ」という。 「医療関係者、トレーニングコーチ、投手コーチ、監督と、組織内の多くの人が関与することになる。どう起用するか、どのような安全対策を講じているか。その対策は現実より理論的か。機能すると考えるプログラムを組むかもしれないが、実際に慎重に見守る必要がある」とも続けた。 広岡氏の言うように、栗山監督以下、チームや周囲に守られて成功した日ハム時代の二刀流が、そのままメジャーで通用するというわけにはいかないだろう。ただ、そういう常識を打ち破ってきたのが大谷であり、次は、メジャーリーグという舞台で世界の常識を日本人が打ち破る姿を見てみたいものである。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)