尾上松也さん「異なる価値観を否定する大人にはなりたくない。」【今会いたい男】
ジャンルや俳優の枠を飛び越えて能動的に活躍。その源には、謙虚で柔軟な姿勢がありました。 【写真ギャラリーを見る】
「異なる価値観を否定する大人にはなりたくない。」
ドラマにミュージカル、現代劇とボーダーレスに活躍している歌舞伎俳優の尾上松也さん。9月には北村想さん作、寺十吾(じつなしさとる)さん演出の舞台『夫婦パラダイス~街の灯はそこに~』に主演する。 「冒頭からファンタジックで、北村さんの独特な世界観があります。謎めいたところをどれだけ自分の中に落とし込めるか、これから始まるお稽古が楽しみです」 本作は『夫婦善哉』で有名な織田作之助へのオマージュも込められている。 「僕と瀧内公美さんが演じる夫婦の名が『夫婦善哉』と同じ柳吉と蝶子。ですが本作の柳吉は、あそこまでのダメ男じゃないです(笑)。映画で森繁久彌さんが演じられたような愛嬌みたいなものは表せられたらいいですね」 松也さんはこれまで歌舞伎自主公演の『挑む~IDOMU~』シリーズや、山崎育三郎さん、城田優さんとのプロジェクト「IMY(あいまい)」でオリジナル舞台を上演するなど、プロデュース業に携わったり、昨年は新作歌舞伎『刀剣乱舞』で初演出を手がけるなど、常に新しい道を切り開いてきた。 「僕ら俳優がお稽古にはいるまでの間にも、大勢の方が動いて、たくさんの準備をしてきているということを知ることができました。一から企画を立ち上げることは大変ではありますが、それが形になりお客さまに受け入れられた時の喜びは、演者として関わるのとは違う達成感があります。今後も歌舞伎に限らず、機会があればつくっていきたいですね」 広くものづくりに関わるなかで、人との向き合い方も変わっていった。
「自分の物差しで価値を測ろうとしないように気をつけています。経験を積むと、どうしても自分の価値観や知識をもとに判断してしまいそうになるのですが、異なる意見を頭から否定してしまうと新たな可能性を潰してしまうことになりかねないなと、いろいろなことを経験してみて痛感しました」 違う意見でも、根拠を尋ねてみると意外と相手の案を選んだほうが良いと気づくことがあったのだという。 「相手の年齢やこれまでのキャリアなどに関係なく、聞く耳は絶対に持たないといけない。自分の感覚にないものを否定しがちな大人にはなりたくないなと思いますね」 おそらくこの柔軟性こそが松也さんの魅力。新たなものを生み出す力になっている。