世界のM&A最新動向…中国の不動産市場の是正、APAC地域のディールメイキングに多大な影響
EMEA…ECBの政策でM&Aが促進される可能性
金融引き締め政策が続いたあと、ヨーロッパ・中東・アフリカ(EMEA)地域の取引市場も実を結ぶ準備が整いました。インフレは2023年初頭から低下傾向にあり、この地域における景気後退のリスクは減少しているようです。欧州委員会も、域内の2023年のGDP成長率の見通しを0.8%から1.0%に、また2024年については1.6%から1.7%に、それぞれ上方修正しました。 世界銀行の予測によると、中東・北アフリカ(MENA)地域の成長率は、湾岸協力会議諸国が原油価格の高騰で棚ぼた的利益を得たため2022年に6%の拡大を見ましたが、2023年には1.9%まで著しく減速するとのことです。それでも、外国投資家は世界のこの地域への関心を高めています。
APAC…中国の不動産市場の落ち着きがM&A回復に貢献
中国の不動産市場の是正は、APAC地域のディールメイキングに多大な影響を与えるでしょう。金利引き下げや銀行の預金準備率引き下げによる信用状況の緩和を含め、このセクターを安定させるための中国政府の措置は、依然としてAPAC地域のディールメイキング大国である中国の民間部門の投資の増加に拍車をかけると予想されています。 2024年において、APACの膨大な製造能力を過大評価することはできません。I&C(工業・化学品)セクターは、このセクターが他のどの産業よりもリードしている中国と韓国の2つの市場でのみ、M&A手続きで支配的になると予想されています。 TMTセクターはI&Cとほぼ互角であり、東南アジア、インド、日本におけるM&A活動の主要な供給源となる見込みです。APACのデジタルインフラストラクチャ分野は、2024年も引き続き豊富な取引フローの供給源になりそうです。 インドの第2四半期GDPが7.6%という好況を示していることから、世界の投資家はインド市場の潜在力への関心を高めています。他の東南アジア諸国も、製造能力の拡大、家計収入の増加、テクノロジー導入の増加に後押しされて、急速に追い上げています。 清水 洋一郎 Datasite 日本責任者
清水 洋一郎
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