訴え届かず、繰り返される悲劇 「高止まり」するストーカー被害、解決策は
事件のたびに対策
ストーカーが注目されるようになったのは、埼玉県桶川市で平成11年、女子大学生が刺殺された事件だった。翌12年にストーカー規制法が成立し、神奈川県逗子市で24年、市役所から元交際相手の男に住所が漏れて30代女性が殺害された事件を受け「執拗(しつよう)なメールの送信」が規制対象に追加されるなど、今日まで改正が繰り返されている。
25年に東京都三鷹市で女子高生が殺された事件では、復讐のため元交際相手などの裸の画像などをインターネット上に公開する「リベンジポルノ」が大きな問題となり、翌26年にリベンジポルノ防止法が成立。同法違反による昨年の摘発件数は62件と、施行後最多を記録している。
ストーカーの診療に従事するカウンセラーは「ストーカーの深層心理には、自意識過剰と被害妄想が共存している。リベンジポルノは、被害者意識に起因する典型的な行動なのでは」と推測する。
■頼られない警察
ストーカーによる被害を防ぐためには、周囲の助けが欠かせない。ただ警察庁が昨年行った犯罪被害者のアンケート調査では「ストーキングされて最初に相談する相手(複数回答)」との問いに対し最も多かったのは「相談しなかった」で50・9%。次いで「家族」が45・6%、「友人や知人」が40・0%。「警察はあまり頼りにされていないようだ」(警察庁の担当者)。
今年も新宿の事件が起きてしまったほか、5月18日には大阪で19歳の女子大生が交際していた男に刺殺される事件が発生。被害者は周囲に相談していたものの、警察にはしていなかった。
「ストーカー規制法で(禁止命令などの)行政措置をとったり逮捕したりすることが、抑止ではなく憎悪を助長する逆効果を招くのはもどかしい」。警察関係者は苦しい胸の内を明かしつつ、「手をこまねいているわけにはいかない」と力を込めた。