【山中伸弥×羽生善治】AIも敵わない…「ノーベル賞級の発見」をしたスゴすぎる「思考法」
「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第18回 『【山中伸弥×羽生善治】二人の天才が納得する驚きの勉強法! 「独学ができない人の特徴は…」 明かされる意外な答え』より続く
大発見を導いた「勘」
山中 僕はもともと臨床の医師で、今は研究をやっていますが、研究でもAIを活用しています。まだまだAIよりは自分たちでやったほうがより正確だなと思うことも多いんです。でも自分たちが今やっていることが、将来的にAIに全部置き換わってしまうのかどうかを真剣に考えます。iPS細胞樹立の過程で僕たちがやったことを、どれだけAIにできるのかな、と。 羽生 多分、どの分野でも同じような課題に直面しているでしょうね。 山中 iPS細胞を作ることに成功したプロセスで、僕たちが2十4個の遺伝子から細胞の初期化に必要な4個の組み合わせに行き着いた秘訣は、言ってみれば「勘」だったんです。もう何だか知らないけれども、「どうもこの遺伝子があやしい」「この遺伝子は絶対試したい」という勘がありました。問題は、僕たちが「勘」と呼んでいるものをAI君がはたして再現できるかどうか。 先ほど将棋を指す際の直感、読み、大局観というプロセスを伺いましたけど、羽生さんはふだん将棋を指しているとき、どれくらい勘で指してらっしゃるんですか。
「勘」の精度
羽生 いや、ほとんど勘です(笑)。あまり先のことを読んでも、あっという間に何千手とか何万手の手数になってしまうので現実的ではありません。もうほとんどの局面で、勘によって絞った2つか3つくらいの手しか考えていません。だから全体から見れば、ほんのひとかけらという感じなんです。 でもそこで大事なのは、勘でどれほど精度の高い判断ができるかです。それから、必ず予想外のことが起こります。その予想外のことが起こったときに、どれだけうまく対応できるかです。 山中 やっぱり勘なんですね。じゃあ、その勘っていったい何なんだろうといつも考えるんです。勘には、単純なくじ引きみたいな勘もあると思うんですが、羽生さんの勝負のときの勘も、僕たちが研究でこの遺伝子をぜひ試したいと思った勘も多分、単純なくじ引きをやっているわけではなくて、過去の経験に基づく何らかの判断がモヤーッとしたところであるような気がするんですね。でもそれが何かというのは、なかなか自分でも言葉にできません。 『「妻がびっくり仰天してました」・・・ノーベル賞科学者・山中伸弥が明かす、アイデアを生み出す意外すぎる行動』 に続く
山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)/羽生 善治