前代未聞の大抜擢も打ち切り危機…松平健の転機『暴れん坊将軍』への思い「とにかく頑張るしかなかった」
心に深く刺さった「勝新太郎の言葉」
若手を抜擢したためか、放送開始当初はワンクール、つまり3か月で終わるだろうと言われていた『暴れん坊将軍』だったが、回を重ねるごとに視聴率はどんどん上がっていった。 「とにかく成功させなきゃいけない。最初はいろいろと批判もありましたが、それは気にせず、とにかく頑張るしかないと取り組みましたね」 結果的に、『暴れん坊将軍』は24年にわたり、ドラマシリーズ12作に加え、スペシャル版も制作されるほどの大人気シリーズに。令和の今もなお再放送され、明治座で行われる『芸能生活50周年記念公演』では、舞台で生の『暴れん坊将軍』が披露される。 「最初のころはやっぱり、おじいちゃんおばあちゃんが観てくれていた。そして、その横で観ていた孫が成長して大人になって、改めて再放送を観てくれているようですね。子どものころに『暴れん坊将軍』を観たのをきっかけに歴史に興味を持って、そこから成績が良くなったとか、学校のテストで『徳川の八代将軍は?』という問いの答えに『松平健』と書いてしまったとか(笑)、嬉しいエピソードもたくさんあります」 松平さんは『暴れん坊将軍』以外にも、『草燃える』『利家とまつ』といったNHK大河ドラマをはじめとする時代劇に多数出演。さらには『走れ!熱血刑事』(テレビ朝日系)、『新・美味しんぼ』(フジテレビ系)、『下剋上球児』(TBS系)などの現代劇にも出演している。 「『暴れん坊将軍』をやっている間は、できるだけ“上様”のイメージを壊さない仕事を選んでやっていました。ですから、最終回を迎えた後は、それまでやらなかったような役柄も、積極的にお受けするようになりましたね」 さまざまな役にチャレンジしたい――。昨年公開された映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』では、奇抜なキャラクター・ウンパルンパの日本語吹き替えを担当し、歌い踊りながらのアフレコも披露した。 「歌もあって大変だったけど、演じていて面白かったですね。お客様が楽しんでくださるのが、なによりも嬉しいんです。たとえ過去にやったことがないジャンルでも、『面白そうだな』と感じる仕事は、これからもどんどんやっていきたいですね」 現在70歳の松平さん。年齢を重ねるごとに仕事の幅は無限大に広がっている。 「以前と変わらず、好奇心があるし、新しいことをやってみたい。それは、若い頃に勝新太郎先生から言われた『さまざまなことに興味を持ちなさい。興味を持たなくなったら目が死んでしまうぞ』という言葉が、心の深いところに刺さっているからだと思いますね」 松平健(まつだいら・けん) 1953年11月28日生まれ。1975年にテレビドラマ『座頭市物語』(フジテレビ系)でデビュー。1978年から『暴れん坊将軍』(テレビ朝日系)で、徳川吉宗役を演じ、時代劇俳優としての地位を確立。以降、多数の映画やドラマで活躍し、代表作にNHK大河ドラマ『草燃える』『義経』『鎌倉殿の13人』、『リーガルハイ』(フジテレビ系)、『PTAグランパ』(NHK BSプレミアム)、『下剋上球児』(TBS系)などがある。歌手としても2004年『マツケンサンバII』が大ヒット。現在も老若男女に愛される楽曲となっている。 工藤菊香
工藤菊香