なぜ、生きるのか(7月21日)
「人はなぜ、生きるのか」。古代から人を悩ませてきた。答えを見いだせないまま、果てしない迷宮の中で堂々巡りを繰り返す若者も少なくない▼谷川俊太郎さんは詩作を通じて、この重い問いと向き合い続けてきた。4月に出版した作品集のタイトルは「生きてるってどういうこと?」。「生きる力」「幸福」をテーマにした18編を美しい挿絵と共に収めている。共感を呼び、早くも重版された。「読者の心が動くよう本の題名を疑問形にした」と、あとがきで明かしている。問いを解く鍵が、作中にあるのだろうか▼国の2年前の調査によると、不登校の小中学生は全国で30万人に上った。県内は約3500人で、前年より2割増えている。原因の多くは「無気力・不安」にあるとされた。なぜ、生きるのか。歩む道を見いだせず、うつむいたままの青春の日々が浮かぶ▼〈ほんとうの宝は/日々の暮らしの中にひそむ〉。かの作品集にある。長い学校の夏休みが始まった。家族や友人との語らいや、身の回りの自然とのふれ合いに心が解き放たれるといい。答えは手を差し伸べさえすれば、つかめるのかもしれない。92歳を迎えた言葉の魔術師からのメッセージ―。<2024・7・21>