中国・上海で「タヌキの国勢調査」発表
【東方新報】世界有数の大都市である中国・上海市で、民間科学団体が「2023年タヌキ国勢調査」というユニークな発表をした。 タヌキは中国で国家2級保護動物に指定されているが、上海市内での生息数が増加傾向という。調査によると、市内の200か所に3000~5000匹が生息しているという。 一昨年4月には、自宅付近の草むらで生まれたての犬のような動物を住民が発見し、名前をつけて飼育したところ、成長につれて犬と違う姿になっていきタヌキと判明した。タヌキは自然に戻す野生化の訓練をするため、上海動物園(Shanghai Zoo)に移された。 ある高級マンション街ではタヌキが目撃され、最初は住民がえさをやったりしていたが、20匹以上に増え、食べ物を持っている住民を集団で取り囲むようになった。危険を感じた住民たちが「えさをやらない」「タヌキがごみをあさらないようゴミ出しをしっかり管理する」と取り決めをしたところ、次第にタヌキの姿を見なくなったという。タヌキ国勢調査を発表した団体も、タヌキの個体数の適正化を求めている。 復旦大学(Fudan University)生命科学学院の王放(Wang Fang)研究員は、「タヌキは雑食性で、肉食にもベジタリアンにもなれる。洞窟から渓谷まで自然界のさまざまな条件に対応し、都市空間にも適応できる」と説明する。 上海市内では最近、タヌキだけでなくコジャコウネコやヤマネコ、クリハラリス、ハリネズミ、コウモリなどの野生動物の生息も確認されている。近年の都市開発は緑地を一定の割合で保全・整備するよう計画されており、都会もそれなりに自然が多い。食料や水源の確保を含めると、都市部は野生動物にとって過ごしやすい環境と言える。 ただ、王放氏は「生物学の世界にはエコロジカル・トラップ(生態的わな)という言葉があります。短期的には生存しやすいが、長期的にはデメリットがある環境を選んでしまうことを指します。野生動物が都市に根付き、生存能力を失うことは好ましくない」と指摘する。 上海市は昨年10月1日、「野生動物保護条例」を施行。野生動物の生息地保護を促進すると同時に、市民に野生動物にえさをやる、近づく、危害を加えることがないよう求めている。 日本でも最近、クマが都市周辺に生息する「アーバンベア」が話題になっている。ヒトと動物の共存は、各国共通のテーマと言える。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。