11月なのに台風4個が同時発生…専門家も警鐘を鳴らす『寒冷渦』の発生と殺人豪雪・豪雨の可能性
今年を象徴するような異常気象は、まだまだ続きそうだ。 記録的な猛暑に襲われた今年の日本列島。6~8月にかけて全国各地の観測所で猛暑日を記録した延べ回数は8821回。これまで最も多かった‘23年の6692回を大幅に上回った。 【画像】記録的豪雨で土砂が流れ込み…今秋に能登半島を襲った”殺人豪雨”の生々しい爪痕 異常気象の影響は11月に入っても続いている。11月上旬だけで22号~24号と3個の台風が発生。さらに12日には台風25号が発生し、日本近海に4つの台風が“同時発生”する状況となった。これは1951年の観測開始以来、11月としては初めての出来事となる。 ◆世界では「39兆円規模」の被害も発生 さらに、天変地異級の異常気象は世界中で続いている。 9月末、アメリカに上陸したハリケーン『ヘリーン』の死者数は200人超え。‘05年の『カトリーナ』以来、最悪の犠牲者数となった。経済損失は最大で2500億ドル(約39兆円)にも及ぶとの見方もあるという。その約2週間後には、一時、最大警戒レベル・カテゴリー5にまで発達した『ミルトン』も、勢力を落としながらではあるがフロリダ州に上陸。場所によっては1000年に一度とも言われる豪雨を記録したのだ。浸水、強風による建物倒壊など被害は多岐にわたり、格付け会社フィッチ・レーティングスは、保険業界の損害額を300億~500億ドル(約4兆6800億円~7兆8000億円)と見積もっている。 異常気象に詳しい三重大学生物資源学部の立花義裕教授が、相次ぐハリケーンについて解説する。 「勢力の強いハリケーンが2つ連続するのは極めて稀なことです。ハリケーンは海面水温が高いと発達します。確かにカリブ海やメキシコ湾の水温は高いのですが、1つが発達すると、直後の2つ目は弱いはずなんです。風による大波が海水をかき混ぜ、暖かい上層の海水が深層のものと混ざりあうことで温度が下がるからです。ところが2つ連続で勢力が強かったのは、海の相当深いところまで水温が高いという事です」 ◆大陸から寒気を連れてやって来る「寒冷渦」 規格外の天災は欧州でも発生した。10月29日~30日にかけて、スペイン東部バレンシア州で集中豪雨による大規模洪水が発生。死者は223人に上り、未だ17人が行方不明という。さらに2週間もたたない11月13日にも再び大雨が発生し、気象当局がアンダルシア州とカタルーニャ州に警報を出して警戒を呼びかける中、道路の冠水や建物の浸水などの被害が報告され、約3000人が避難する事態となった。 「アメリカのハリケーンも同様に、これらの原因は地球温暖化だ」と、前出の立花氏は指摘する。 「地中海など欧州周辺の海水温も非常に高い。温かい海からの水蒸気が雲になって大雨を降らせたのです。水温を高くした原因は温暖化による猛暑です。そして、温暖化によって北極圏と中緯度地域の気温差が縮小したことで、偏西風が弱まり激しく蛇行し、『寒冷渦』がスペインの方まで降りてきたのです。 『寒冷渦』は強い寒気を伴った低気圧の一種で、偏西風が強ければ東に移動していきます。しかしそうはならず、スペイン上空に寒冷渦が停滞し、地面から暖かい湿った空気を上空に吸い上げ大雨を降らせたのです」 世界各地で発生する異常気象。日本近海では11月半ばだというのに台風が連発するのも、根源にあるのは地球温暖化だ。さらに、2週間前に欧州に甚大なダメージを与えた一因である寒冷渦は遥か遠くの話ではなく日本にも影響する可能性があると立花氏は言う。 「日本付近も海水温が平年比で高く、雨雲が発達しやすい状況が続いている。これはアメリカのハリケーンのように、台風が通過しても、直後にまた勢力の強い台風が来る条件が整っているということです。さらに、温暖化の影響もあり季節の進行が1ヵ月くらい遅れていて、潮の流れや海水温などの海の環境が、例年の10月に近い。10月は台風シーズンなので、現在は11月でも台風が来ている。 そして偏西風の激しい蛇行は日本付近も同様で、蛇行パターンが南に垂れ下がり、大陸からの寒気が日本列島を覆うように下ってきます。今の日本は台風及び低気圧に連動する秋雨前線や、寒冷渦の停滞による豪雨から、浸水、土砂災害が起きやすい状況と言えます。また12月~1月は平年より寒くなる予測が出ています。蛇行した偏西風からの寒冷渦は北から寒気を引っ張ってくる。真冬ならば大雨のほかに豪雪被害が懸念されます。今や日本の季節は夏から急に冬へと変化するのです」 災害級の豪雪・豪雨が日本に迫っている。
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