支援犬を病院や学校に派遣へ 日本補助犬協会「患者らの不安軽減に」
目や耳が不自由な人や手足に障害のある人をサポートする補助犬の育成・認定などに当たっている日本補助犬協会(横浜市)が、訓練を受けた支援犬を医療や教育の現場に派遣する事業に乗り出す。身近に犬がいる暮らしの豊かさを伝えたいという。 【写真】介助犬ノースとデモンストレーションをする安杖直人さん。安杖さんが声をかけると携帯電話を持ってきてくれた=2024年11月6日、横浜市中区、増田勇介撮影 医療ファシリティドッグ(支援犬)は、病院の診察に寄り添ったりリハビリに参加したりして、患者の不安を減らす。すでに大阪府の病院では協会の補助犬と訓練士が常駐しているという。 教育分野では、12月から東京大教育学部付属中等教育学校(東京)に支援犬を派遣する予定だ。登校や学習への意欲を高める効果があるといい、海外では学生の精神的なサポートだけでなく、教職員のストレス緩和につながるといった報告がある。 自閉症児の動作訓練でも、支援犬が着用する服のボタンや面ファスナーの開け閉めの動作を学ぶことができる。自閉症児は興味がわき、コミュニケーションのきっかけもつかみやすいという。 2002年に施行された身体障害者補助犬法では、盲導犬、聴導犬、介助犬を補助犬と定めており、利用者にとっては欠かせない存在だ。 ■ドアを開け、緊急時には携帯も持ってくる介助犬 車いすで生活する補助犬協会の安杖直人さんは、一緒に暮らす介助犬のノースが自宅のドアを開け、緊急時には携帯電話を持ってくる。「私もノースの世話をするために規則正しい生活を送り、ポジティブな気持ちになる」という。 ただ、利用は停滞しているのが現実だ。盲導犬は2010年前後には全国で1千頭を超えていたが、今年4月現在で796頭。介助犬は59頭、聴導犬は53頭にとどまる。 補助犬協会の朴善子代表理事は「ユーザーの高齢化や(外出支援といった)福祉制度の充実に加えて、施設の受け入れ拒否の経験も大きい」と指摘する。介助犬や聴導犬は知られておらず、その説明が利用者の負担になっているという。「補助犬とユーザーが社会に参加することで、インクルーシブ社会につながっていく」と訴える。 補助犬協会は補助犬を育成した上で、無償で貸与しており、年間1億円ほどの事業費の多くを寄付に頼っている。クラウドファンディングなどで寄付を募っており、問い合わせは同協会(045・951・9221)へ。(増田勇介)
朝日新聞社