財務省の信用を失墜させかねない「一枚の資料」 これこそが「日本経済凋落」を招いた真因だ
だから、例えば、不況による税収減で政府債務が増大しても、政府支出をいっさい拡大しなければ、それは「積極財政」とは言わない。これは、「積極財政」の定義の問題である。 したがって、政府債務の増大が成長につながっていないことを示したところで、積極財政論者への反論になるはずもないのである。 ■「政府債務」の規模は直接操作できない そもそも、政府は、財政支出の規模を直接操作することはできるが、政府債務の規模は直接操作できない。なぜなら、財政赤字の規模は税収次第であり、税収はGDPに依存するが、GDPは政府が政策によってコントロールできない要因によって変動する。したがって、政府が政府債務の程度を直接操作することはできない。
ちなみに、政府は、税収も直接操作できない。「税収=GDP×税率」であるから、税収もGDPに依存する。政府が直接操作できるのは「税率」である。 基本的には、政府が直接操作できるものが政策手段となる。だから、財政運営は、政府債務ではなく、政府支出の規模や税率を操作するのだ。そんなことは、財務省自身が最もよくわかっているはずであろう。 したがって、「積極的な財政運営が持続的な成長にはつながっていない面もある」ことを示したければ、政府債務ではなく、政府支出と成長の関係について示すべきだったのである。
だが、財務省は、そうしなかった。なぜか? その理由は、後ほど明らかにする。 さらに驚くべきは、「先進国の債務残高(対GDP比)と実質経済成長率の関係性を見ると、必ずしも正の相関関係は見られない」という記述である。 信じがたいことに、財務省は、「債務残高」ではなく、「債務残高/GDP」と実質GDP成長率の相関関係を見ているのだ。 そんな相関関係を見ることに、いったい、何の意味があるというのか。 もはや言うもバカバカしいのだが、債務残高をGDPで割った値は、GDPが大きくなれば小さくなるに決まっているではないか。