武居由樹がボクシング世界王者になる直前に大ピンチ 八重樫東トレーナーは「あんなこと言わなきゃよかった」と反省した
――ポイントでは上回っていて判定勝ちもできたと思いますが、やはり倒して勝ちたかった? 武居 そこは、元K-1ファイターとしてのこだわりですかね。会場のみんなのために、みたいな部分はあったかなと思います。観客のみなさんに楽しんでもらいたい、喜んでもらいたいということを、ボクシング転向後もずっと意識しています。 ――試合前、武居選手が花道に現れた瞬間、東京ドームが揺れるほどの大歓声が上がりました。 武居 今までに味わったことがない迫力でしたね。「うわぁ、やっぱりすごい!」と。花道を歩いていて......表現が正しいかはわかりませんが、気持ち、よかったです。マロニー選手が強い選手で注目度も高まりましたから、それもよかったなと思います。 ――プロ9戦目、強豪のマロニー選手が相手の世界初挑戦。「まだ早いのでは?」という声もあったかもしれませんが、ご自身ではどう感じていましたか? 武居 ちょうどよかったと思います。キックからボクシングに転向した目的は世界チャンピオンになることでしたから、いつでも挑戦する準備はしていました。ただ、K-1で25戦(23勝16KO 2敗)した経験がなければ、今回もビビッていたかもしれません。K-1での経験があってこそ今の自分がある、と思いますね。 ――武居選手のほかにも、K-1から他の格闘技へ移って活躍する選手が増えている印象があります。 武居 僕がいた頃のK-1は、みんながスター選手でした。それぞれが個性や独自の色を出していこうという強い思いを抱いていたと思います。マイクパフォーマンスで盛り上げることが苦手だった僕は、「試合で魅せないといけない」と思って戦っていた。そうしないとすぐに"埋もれて"しまいますから。
【ローブローで減点も「気にせず打て!」】 ――試合内容について、お聞きします。武居選手は2ラウンド、左のボディーストレートがローブローとして減点を取られました。あの時の気持ちはいかがでしたか? 武居 「あっ、減点取られた」と思ったくらいですね。「これで取られちゃうんだ」という感じでした。 ――マロニー選手のベルトラインが太く、ハイウエスト気味だったようにも思えました。 武居 試合中はそれほど気にしていなくて、見返した時に、「あ~高いな」と。言われてみれば確かに......とはなりました。 ――減点された直後も、左のボディーストレートを変わらず打ちにいきましたね。 武居 セコンドの八重樫さんから「気にせず打て! 減点されてもいい」と言われたので。(横にいる八重樫氏に)言いましたよね? 八重樫 そこまで低くなかったですからね(笑)。 ――あの試合は、左を上下に散らして攻めるイメージだったんでしょうか? 武居 上下に散らすのと、真っすぐなパンチを打っていく、だったと思います。(八重樫氏に)合ってますか? 八重樫 あと、ワンツーですね。 武居 そうですね。ワンツーとボディー。当たればフック、みたいな感じでした。 ――6ラウンド終了間際、そのボディーからのフックのコンビネーションでマロニー選手がよろける場面がありました。 武居 そこはしっかりと覚えています。ただ、残り10秒くらいしかなかったので、「ここで追撃にいってもダメだな」と判断しました。 ――中盤以降、マロニー選手が前に出てきましたが、ある程度ポイント差は計算していたのでしょうか? 武居 僕はまったくしていなかったですね。ポイント差もわからなかったです。 ――八重樫さんはいかがですか? 八重樫 マロニーは試合の前半、何もアクションを起こしてこなかったので、「武居がポイントを取っている」と思っていました。中盤以降は、距離が近くなって武居もパンチをもらい始めたので、ポイントがどっちに振れるのかわからなかった。ただ、中盤以降がイーブンだとしても前半の貯金があるから大丈夫だとは思っていたので......12ラウンドのピンチの場面では、「レフェリー、お願いだから止めないで」と思ってました(笑)。