若い夫婦、住んでほしい。立川市手がけるプレミアム婚姻届政策の“訴求力”
市庁舎まで足を運んでもらうため工夫凝らす
「立川市は、若い世帯の定住人口を増やすことに取り組んでいますが、その取り組みのひとつとして考えられたのが“プレミアム婚姻届”でした。立川市がデザインに工夫をこらした“プレミアム婚姻届”は、市外にお住まいの方でも購入することは可能ですし、ほかの役所窓口に提出することもできます。しかし、立川市内でしか取り扱っていないので、“プレミアム婚姻届”を手に入れるには、立川市に足を運んでもらうことになります。足を運んでもらい、立川市を知ってもらう。そして、『この街に住みたい』という気持ちにつなげる。そんな意図から、“プレミアム婚姻届”が生まれたのです」(同)。 2016年5月から発売を開始した“プレミアム婚姻届”は、初年度に1700枚、2017年度に2224枚を販売。そして、今年に入っても売れつづけています。 購入者のうち夫婦ともに市外在住は755組、どちらかが市外在住は255組。この数字から見ても“プレミアム婚姻届”に大きな訴求力があり、立川市の狙いは見事に当たったことが窺えます。 「立川市では“プレミアム婚姻届”というモノだけではなく、婚姻届を購入する、提出する際に市庁舎まで足を運んでもらえるような工夫をしました。市役所内には、カップルのための記念撮影ブースを設けています。平日の開庁時間内なら職員が記念撮影のお手伝いをすることもできますし、インスタントカメラで写真を撮り、それを市庁舎内の掲示板に貼り出すサービスもしています」(同)。 これらの取り組みには、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNSで立川の発信をしてもらいたいという意図があります。
他自治体も“特別仕様”増加。国は支障あるデザインへの規制検討
立川市の“プレミアム婚姻届”が好評を博したこともあり、ほかの自治体でも特別仕様の婚姻届を用意するケースが増えました。そうした特別仕様の婚姻届を用意する自治体が増えたことで、ただならぬ事態も起きています。 デザインに工夫を凝らした婚姻届は、読み取り作業時に不具合が生じることがあるのです。今般、戸籍や住民票などの電子化を推進するべく、政府は読み取りに支障が出るデザインの婚姻届を規制する検討を始めました。 せっかく盛り上がりを見せている立川市の“プレミアム婚姻届”も、規制によって撤回することになるのでしょうか? 「立川市の“プレミアム婚姻届”は、台紙と提出用紙とに分離できるようになっています。役所に提出する用紙は、通常の書式とほとんど変わりません。特別仕様になっているのは、あくまでも台紙です。だから、今回の規制を受けるとは考えておりません。また、立川市は“プレミアム婚姻届”に特別な受領印を押していますが、こちらも規制を受けることはないでしょう」(同)。 “プレミアム婚姻届”には、地方創生という側面もあります。立川市は近隣の結婚式場やレストラン、レンタル衣装店などとも連携。“プレミアム婚姻届”という政策は、単なる婚活支援に終わることなく、地域活性化にもつながっているのです。 小川裕夫=フリーランスライター