会見に参加した飯沼愛

　あ～もったいない！　というのが初回を観終えた直後の感想だった。7月16日（火）に第1話が放送された『南くんが恋人!?』（テレビ朝日系）のことだ。 　不朽の名作『南くんの恋人』の最新リメイク作。1987年発売の漫画が原作で、今回が5度目の実写化である。 　テレビ朝日での実写化だけでも今回が3度目で、1994年に高橋由美子×武田真治、2004年に深田恭子×二宮和也で連ドラ化されている。 　ある日突然、恋人が15cmの手のひらサイズに縮んでしまうというラブコメディ。小人のようになってしまった恋人の存在を隠しながら、同居生活を送るというハラハラ・ドキドキの展開がウケていた。 　これまでは彼女のほうが小さくなっていたのだが、今作は男女逆転バージョンということで、彼氏が小さくなってしまうアレンジが加えられている。 ■こんなCGしかできないのに、なぜGOサイン？ 　くわしくは後述するが、初回の序盤から中盤にかけては、ノスタルジーが香る甘酸っぱい作風に好感を持って視聴していた……が、終盤になってそれまでの好印象が急落。 　原因は明白だった。終盤でようやく話が本筋に突入して彼氏が15cmに縮むのだが、とにかくCGがちゃっちいからだ。 　小人サイズのキャラと背景の合成が雑すぎて、悪い意味で1990年代クオリティかと思うほどの低レベル。今は素人だってムービー編集アプリを使えば、合成などもわりと簡単にできるご時世だけに、残念で仕方ない。 　言わずもがな、小さくなった恋人をどう描くかが最重要ポイントなので、こんな程度のCG表現しかできない予算と技術しかないのなら、そもそも企画にGOサインを出すべきではないと、怒りを覚えたほど。もうちょっとマシにできなかったものか……。 　キャスト陣や脚本は素晴らしいので、もったいないという気持ちになってしまった。 ■メインを張る若手2人を支える役者陣の豪華さ 　主人公・堀切ちよみを演じるのは飯沼愛。小さくなってしまう彼氏・南浩之を演じるのはFANTASTICS・八木勇征。 　ちよみを演じる飯沼は、まだデビューからそれほど経っていない若手。初のGP帯（ゴールデン・プライムタイム）連ドラ主演だが、昨夏に考察ブームを巻き起こした『VIVANT』（TBS系）にて、天才ハッカーを演じた女優だと言えば顔を思い浮かべられる視聴者は多いだろう。 　キャリアが浅いぶん、みずみずしいフレッシュな演技でヒロインを演じており、作風にとてもマッチしていると感じた。 　そして、メインキャスト2人が若手なぶん、周囲のキャラを実力派の役者たちで固めているのもいい。 　ちよみはかなり複雑な家庭に育った設定で、母親役に木村佳乃、祖母役に加賀まりこ、同居する義理の父親役に武田真治、別居している実の父親役にサンドウィッチマン・富澤たけしを配している。 　ちなみにややこしい家庭環境ながら、家族はみな明るく朗らか。団らんシーンでは家族同士の掛け合いが楽しく、ほっこりさせられるので、ホームドラマとしても十分観られるだろう。 　ほかにも、南くんの父親役に沢村一樹、ちよみの部活のコーチ役に光石研、ご近所さん役に室井滋といった芸達者が脇を固めているので、作品全体としてかなり安定感のある演技を堪能できる。 ■1994年版『南くんの恋人』ファンにはエモすぎ！ 　お気づきかと思うが、1994年版『南くんの恋人』で南を演じた武田真治が、ちよみの父親役というのはなんとも粋なキャスティング。世界観も役柄も異なるものの、武田演じるキャラがちよみにやさしい目で語りかける姿などを見ると、それだけで「エモっ！」と思う往年のファンは少なくないはず。 　さらにいうと、本作を手がけているのは『ビーチボーイズ』（1997年／フジテレビ系）、『ちゅらさん』（2001年／NHK）、『ひよっこ』（2017年／NHK）といった数多くの代表作を持つ大御所脚本家・岡田惠和氏。 　実は1994年版を執筆したのも岡田氏で、30年ぶりに同じ原作作品を違うアプローチで描くのも、エモすぎるポイントなのである。 　岡田氏の作品は人情味あふれるキャラクターがたくさん登場し、温かな雰囲気で包み込むようなドラマになることが多く、今回の『南くんが恋人!?』もまさにそのタイプ。それゆえに、唯一、ちゃっちいCGが残念でならないのだ。 　――逆に考えれば、CGのお粗末さにさえ目をつむれば、良質なドラマとして楽しむことができるだろう。今夜放送の第2話もストーリーやキャラ同士の掛け合いには期待している。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA！』などに寄稿中