ゾンビものやラブコメだけじゃない! Netflixなどで配信中の大人が楽しめる韓国ドラマ4選
ゴールデンウィークにおすすめ! クオリティの高い韓国ドラマ『寄生獣 ーザ・グレイー』、『ソンサン ー弔いの丘ー』、『最悪の悪』、『ムービング』の見どころを解説する。 【写真を見る】GWに見るべき話題の韓国ドラマをチェック!
『寄生獣 ーザ・グレイー』、『ソンサン ー弔いの丘ー』、『最悪の悪』、『ムービング』の見どころ解説
■『寄生獣 ーザ・グレイー』―― モンスターものが苦手でもハマること必至 突如、世界中に寄生生物があらわれ、次々と人間の脳を乗っ取っていく。人のふりをして社会に潜伏した寄生生物は、人間を捕食し勢力拡大を目論むなか、韓国政府はいち早く特殊部隊「ザ・グレイ」を結成し、一掃に乗り出す。そんななか主人公チョン・スインも寄生生物の襲撃を受けるが、パラサイトは脳を乗っ取ることに失敗し、顔の右部分だけに寄生する変種となってしまう。組織化され徒党を組むパラサイトたちと、特殊部隊「ザ・グレイ」、変種となったスインとハイジの戦いが始まる。 ■日本の名作漫画が原作の韓国ドラマ 原作は日本の名作漫画『寄生獣』(講談社刊)。30以上の国と地域で累計発行部数2500万部を突破するベストセラーだ。オリジナル版漫画では乗っ取りに失敗し高校生・泉新一の右手に寄生することになった寄生生物”ミギー”と新一の共存生活をベースに、パラサイトたちとの壮絶な戦いを描く。本作はオリジナルとベース設定は同じだが、ストーリー展開はまったく異なる。監督は、映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』、Netflixシリーズ『地獄が呼んでいる』などのヨン・サンホ。主人公のヘインは、映画『ソウルメイト』、『チョ・ピロ 怒りの逆襲』で注目を集めたチョン・ソニ、ヘインの相棒となっていくガンウは、Netflixシリーズの『D.P.-脱走兵追跡官-』、ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』などのク・ギョファンが演じた。 ■孤独なキャラクターたちが力を合わせて共闘、あっと驚くエンディングも! 本作は全6話と韓国ドラマにしてはエピソードが少なく、さくっと見られるのも魅力。寄生生物があらわれた後、すぐに特殊部隊を結成して捕獲に乗り出すなど、無駄を省いたストーリー展開でテンポ良く進んでいく。また両親に見捨てられ孤独に生きるヘインと、暴力団から見放された妹思いのガンウ、そして人間でもパラサイトでもない変種のハイジといった、社会からはみ出してしまった多様なキャラクターたちが絆を深め、ともに戦う様子はレジリエンスを高めてくれる。二重人格のようなヘインとハイジを声色や表情を変え、見事に演じ分けたチョン・ソニの演技力は見事。また、人間の顔から寄生生物へと変化する際の違和感を全く感じさせないVFX技術は圧巻だ。菅田将暉出演というあっと驚くサプライズもあり、一気見必至の韓国ドラマだ。 Netflixシリーズ『寄生獣ーザ・グレイー』独占配信中/©岩明均/講談社 視聴はこちらから ■『ソンサン ー弔いの丘ー』―― 遺産相続をきっかけに現れる気味の悪い親戚と次々と起こる殺人事件 大学で非常勤講師として働くユン・ソハは、専任教授になることを目指していた。彼女はそんなある日、忘れ去られていた父方の叔父が亡くなり、先祖の墓地である先山 (ソンサン) の相続人となったことを知らされる。この知らせは、幼い頃に父親が彼女と母親を捨てたことを思い出させる不快なものでもあった。叔父の葬儀では、ソハの異母弟であるキム・ヨンホが、相続に自分も含まれるべきだと騒ぎを起こす。その後次々と不吉な出来事が起こるなか、夫が殺されてしまい、ソハは大きな不安感に包まれる。一方、村で起きた殺人事件を捜査していたチェ・ソンジュン刑事は、村人たちの奇妙な行動から、これは単純な殺人事件ではないと直感し、事件を深く調べるものの、なかなか進展はなかった。やがて、再び殺人事件が発生し、事態は悪化。独自に調査を続けていたソハは、家族のある秘密に辿り着くのだが……。 ■本当に怖いのは人間そのもの ここまで続くことがあるのか、というくらい連続して不幸に見舞われるソハ。そんなソハを演じたのは、『地獄が呼んでいる』のキム・ヒョンジュ。まるで何かに取り憑かれたような不気味なヨンホを演じたのはリュ・ギョンス。ギョンスは別人が憑依してしまったかのような見事な怪演ぶりをみせた。監督と脚本を手掛けたのは、『地獄が呼んでいる』などのヨン・サンホだが、本作はVFXを用いたSci-Fiやゾンビものではなく、人間の怖さそのものを描いている。 ■家系図必須の複雑な関係 相続問題と同時進行で自治体とデベロッパーによる村の開発計画も進行し、政治家や地上げ業者なども絡んでくるため、問題は複雑化し、ソハはますます孤立していく。事件を追うソンジュンとサンミン刑事の間にも一筋縄ではいかない過去があることがほのめかされ、ストーリーは混沌を極める。ストーリー後半は、複雑な家族関係をもとに話が進んでいくので、家系図を書くのがおすすめだ。一体犯人は誰なのか?目的は?という疑問を、一話ごと驚きの展開で紐解いていく。狡猾な計画や家族の秘密が徐々に明らかになるので飽きることなく、あっという間に見終わってしまうだろう。 Netflixシリーズ『ソンサン ー弔いの丘ー』独占配信中 ■『最悪の悪』―― 90年代のソウルが舞台、韓国ノワールの真骨頂 警察官のパク・ジュンモは、泣かず飛ばずの田舎の警察官。一方妻のユ・ウィジョンは出世し、ソウルにある警視庁に勤めていた。そんな中、暴力団組織・江南連合の代表ギチョルは、新種のドラッグ「カンナムクリスタル」を作り、韓国国内や日本へ大量に流通させており、警察はギチョルを追っていた。妻とのキャリアの違いに劣等感を感じていたジュンモは、出世を条件に麻薬組織への潜入捜査を決断する。目的は、ギチョルが率いる江南連合で証拠を集め、ドラッグ製造とその流通網を突き止めることだ。妻にも秘密のまま任務を遂行するジュンモだったが、実は妻もギチョルを追っており、暴力団員スンホ(=ジュンモ)として妻と出くわしてしまう。ギチョルの信頼を得るため犯罪組織に深入りしていくジュンモだが、ギャングたちは疑いを持ち始める。 ■人気俳優たちの共演 田舎にいた時は気弱な警察官だったジュンモだが、偽の暴力団員になりすまし潜入捜査をはじめると目つきが変わり、まるで本物の悪者のような雰囲気に。そんなジュンモを演じたのはアジアの貴公子と呼ばれ、インスタグラムフォロワー数2700万人超えのイケメン俳優チ・チャンウク。江南連合のリーダーギチョルは、『イカゲーム』でスターダムを駆け上がったウィ・ハジュンが演じた。ジュンモの妻ウィジョンは『女神降臨』などのイム・セミ。実はウィジョンは、ギチョルの初恋の相手で、ジュンモの潜入捜査をきっかけにふたりは再会する。ウィジョンは夫ジュンモの素性がバレないようにギチョルの恋心を利用するのだが、これがかけひきなのか本心なのか、観賞者ですらわからなくなるイム・セミの演技力は素晴らしい。 ■法を犯した人間だけが悪なのか 本作の見どころは、ジュンモの素性がバレるかバレないかのハラハラドキドキのジェットコースター展開に加え、騙し騙されあいや、恋心を利用した心理戦だ。罪を犯した人だけが”悪”なのではなく、人の信用を踏みにじった人も”悪”ではないのか。本作はアクションノワールでありながら、ジュンモの葛藤と彼を取り巻く人達の苦悩を描いたヒューマンドラマでもある。最悪の悪とは一体誰だったのか、結末を見るまで答えはでない。 『最悪の悪』 ディズニープラス スターにて全話独占配信中 © 2024 Disney and its related entities ■『ムービング』―― スーパーヒーローも同じ人間、社会からはみ出てしまう人に寄り添ってくれる傑作 1990年代、韓国の国家安全企画部は、スーパーパワーを持つ能力者を集めブラック・オプスチームを設立。極秘任務の遂行を命じられたこのエリート部隊のメンバーは、特殊能力を使って国を守っていた。しかしある日突然、部隊は姿を消し、国中に散り散りになった。数十年後、歩くよりも先に宙に浮くことができた超能力少年キム・ボンソクは、自分の能力を隠しながら、平凡な学校生活を送っていた。そこに再生能力を持つヒスが転校生として現れる。やがて彼らは互いに自らの秘密を打ち明け親しくなる。その頃、ソウルでは謎の配達員が能力者たちを次々と殺す連続殺人が起こり、ボンソクとヒスの平穏な高校生活にも影が迫る……。 ■特殊能力者たちによるヒューマンドラマ 韓国の人気ウェブトゥーン『Moving-ムービング-』を実写化。韓国版『アベンジャーズ』や『ザ・ボーイズ』とも言われる本作だが、単なるスーパーヒーローものではない。空を飛ぶ能力をもつボンソクは不意に身体が浮いてしまい能力保持者であることがバレないように、普段からたくさん食べて体重を重くしている。今までのヒーローはその多くが鍛えられた肉体をもつキャラクターが多いが、ボンソクはぽっちゃり体型で、気立てもおっとりとした優しい少年。また親子の絆をとても丁寧に描いているのも本作の特徴だ。父親がいないボンソクと母親のいないヒス。ふたりの親は、子供たちのことを文字通り命をかけて守ると同時に、子どもたちも親を助けようと必死で悪に立ち向かう。高校生であるボンソクとヒスがお互いを大切に思い、優しい言葉を掛け合うのも心温まる。とはいえ、ヒーローものゆえスプラッターシーンも多々あるのだが。 ■出来なくても違っていてもそれでいい ボンソクが「自分は変なんだ」というと、ヒスが「変じゃないよ、ちょっとだけ違って、特別な存在」というセリフは特殊能力者じゃない我々誰にでも当てはまる言葉だ。どんな人も他の人とは同じではないし、皆特別な一人なのだ。特殊能力者だからといって得しているわけではなく、彼らも生きづらさを抱えている。おっとりしたボンソクが勇気を振り絞って自分を解放し自信をつけていく姿に、明日を生きる勇気をもらえる作品だ。 『ムービング』 ディズニープラス スターにて全話独占配信中 © 2024 Disney and its related entities
編集と文・遠藤加奈(GQ)