被害者の思いを加害者に伝える『心情等伝達制度』 「唯一の償い」なのに支払われない損害賠償 新制度の運用に課題も
■被害者の意見や質問を伝える新制度が開始
そんな中、服役中の加害者に、被害者の今の意見を伝えたり、質問したりできる制度が新たに始まった。 それは「心情等伝達制度」。 刑務所で受刑者の指導などを担当する刑務官が被害者や遺族と対面して聞き取り、加害者にも直接口頭で伝え、その時の反応や答えなどを書面にして返すという制度だ。 大阪矯正管区 成人矯正 第二課 江尻 優課長:被害者等の方々の心情等に直接、受刑者・少年が向き合うことで、改善更生に向けた取り組みが充実することが期待されて、この制度が始まっています。 加害者の更生のための制度だが、釜谷さんは加害者が刑期を終えて出所するのを控え、いちるの望みを託すことにした。 釜谷美佳さん:今までどうやって刑務所の中でやってきたのか、圭祐に対してどんな気持ちでいるのか、出てきてからのこととかも聞きたいし。 今年3月、神戸市。 播磨社会復帰促進センター 被害者担当刑務官:加害者に『被害者から目をそらすな』と。『見続けろ、逃げるな』と。 この日、釜谷さんも参加する「犯罪被害者の会」が招いたのは、加古川市にある刑務所の刑務官。 新たな制度で鍵となるのは、被害者の思いを受け止め、加害者と対峙する刑務官だからだ。 釜谷美佳さん:(加害者が)質問に答えられなかったり、答えない場合は、それ以上は追及しない、できない感じでしたよね。刑務官の方が…2回目があるか分かりませんけど、次は答えられるように関わってもらうことはやってもらえるんでしょうか。 播磨社会復帰促進センター 被害者担当刑務官:もちろんやらせていただきます。1回目(の伝達)で被害者の方、申し出された方が思ったような反応が返ってこなかったということはあり得るとは思うのですが、その後、加害者に矯正指導、矯正教育を行っていって、被害者の方としっかりと向き合っていける心構え、向き合っていける気持ち、真の意味での更生に向けて、われわれ刑務官、処遇を行ってまいります。 とはいえ、刑務官自身もこの制度によって、初めて被害者に向き合うことになったのだ。 播磨社会復帰促進センター 被害者担当刑務官:はっきり申し上げます。われわれ、矯正、これまで被害者の方には目を向けていません。加害者ばかり見ていました。この制度が始まって、初めてようやく被害者の方に目を向ける形をとることができました。初めて被害者の方々に目を向け始めたばかりのわれわれ刑務官、経験ありません。知識もありません。理解もまだまだ低いです。そういった中でも、われわれにできることを考えて、少しでも被害者の方、ご遺族の方々に寄り添って、この制度をより良いものにしていければと考えています。