梨田監督が描くオコエの山田化計画
日ハムの監督時代に同じく高卒ルーキーの中田翔を育成、近鉄監督時代も、中村紀洋のブレイク過程を見守るなど経験豊かな梨田監督は、ここまで見事な手腕でオコエの育成を操縦してきた。キャンプ、オープン戦、開幕と、プロの1軍レベルを肌で感じさせ、目標を具体化させてから2軍に落とし、今度は結果を残してから1軍へ引き上げた。9番でまず野球を見させて、今度は足を生かし、比較的相手バッテリーがストライクゾーンで勝負してくる1番という打席にオコエを放り込んだ。 おそらく交流戦後にレベルの上がるパ・リーグのピッチャーと再び対峙、ひとまわり、ふたまわりしてデータが揃いはじめて、オコエ自身にも歴戦の疲れがたまってくると、そこでまた壁にぶつかるだろう。 だが、梨田監督以下、楽天のコンディショニングも含めたコーチングスタッフの導きと、オコエの向上心と進化力があれば、そう遠くない将来に山田化構想に成功してしまうのかもしれない。ちなみに同じく高卒でドラフトにかかった山田がトリプルスリーを成し遂げたのはプロ入り5年目である。 この日は、三木谷オーナーが観戦した。その“御前試合”で初アーチをマークするのだから、オコエはただものではない。しかもオコエが打席に入ると、ベイスターズファンも「オコエだ!」と口にする。球場の空気をたった一人で変えてしまう不思議なパワーを持っている。 それでも「ホームランが特別うれしいかといえばそうでもない。チームが勝ったほうがうれしい。ホームランは狙っていなし、あくまでもヒットの延長。ホームランより勝利が優先。1試合、1試合、チームの勝利に貢献したい」と、謙虚に初ホームランをふりかえった。 オコエが、4回無死二塁で、セカンドへ進塁打を打ち最低限の自己犠牲のバッティングもしていたことも忘れずに記しておきたい。