【鉄路と生きる】福島県只見町の駅舎、聖地化へ 会津塩沢駅をアートで彩る 映画「青春18×2」の絵本作家描く
10月1日で全線再開通から2周年を迎えるJR只見線の利活用促進へ、福島県只見町は独自に町内の会津塩沢駅の駅舎をアートで彩る。只見を舞台とした日台合作映画「青春18×2 君へと続く道」で絵を担当した絵本作家の吉田瑠美さんが駅舎に絵を描く。町内の会津蒲生駅でも来年度に同様の取り組みを行う予定。映画は台湾でも大ヒットしており、町は「聖地」として国内外からの観光誘客につなげたい考えだ。 吉田さんは映画の中で、俳優の清原果耶さん演じる只見町出身のアミが描く絵を制作した。同映画の藤井道人監督の姉で絵本作家として数多く作品を輩出している。町は会津塩沢駅を管理する県の承諾を既に得ており、吉田さんは今月20日から同25日まで現地で絵の制作を繰り広げる予定だ。 吉田さんが駅舎に絵画を描くきっかけとなったのは只見中2年の角田杏さん(13)からのメールだった。映画の中ではアミが台湾のカラオケ店の建物に絵を描くシーンがある。映画を見た角田さんは「私はアミちゃんの後輩です。私の町にある無人駅に絵を描いてほしいです」というメールを吉田さんに送った。吉田さんは8月中旬に只見町を訪れ、角田さんと会い、純粋な思いに心を打たれ絵を描くことを約束。町が会津塩沢駅を管理する県と協議をし実現に至った。
吉田さんは「アミが見ていた只見町の景色」というタイトルで描く。金山町の奥会津郷土写真家の星賢孝さんが撮影した写真をモデルにアレンジを加えた。只見町は会津蒲生駅でも吉田さんに絵の制作を依頼する方向で調整している。吉田さんは「只見町を訪れた人が美しい自然と温かい人、そして駅舎に描いた絵で心を癒やしてもらえればうれしい」と思いを語った。 ◇ ◇ 2026(令和8)年度は福島市の県立美術館で「大ゴッホ展」が開幕する。福島県は大ゴッホ展に合わせて県内の芸術作品などを巡るアートツーリズムにも取り組む。只見町は県との連携を模索している。 映画の中では新潟県内も重要な舞台となっている。町と新潟県を結ぶ国道289号八十里越区間(延長20・8キロ)が早ければ2026年秋にも開通する。町は会津塩沢、会津蒲生両駅の駅舎を新たな観光スポットとして売り込む構えだ。 町交流推進課は「只見町内での取り組みが周辺の地域にも広がり、只見線の利活用促進や地方創生につながればうれしい」と期待している。