JR福知山線脱線事故「興味本位で見られたくないとの意見重く受け止め」車両施設を非公開
乗客106人が亡くなった2005年のJR福知山線脱線事故で、JR西日本は9日、兵庫県宝塚市で、遺族や負傷者らへの説明会を開き、事故車両の保存施設について、一般向けには原則非公開にすると伝えた。 【画像】JR西日本 施設の一般公開を巡っては、遺族の間で考えが分かれている。長谷川一明社長は説明会後の記者会見で、非公開とした理由について「興味本位で見られたくないとの意見もあり、重く受け止めた」と説明した。
一方、「事故の事実を伝える重要な意義がある」とし、「将来的な一般公開について、引き続き検討する」と述べた。 施設は、25年12月の完成を目指して大阪府吹田市で整備が進められている。JR西は完成後、社員や希望する遺族のほか、当時救助に携わった関係者や運輸事業者の安全管理担当者に限って公開するとしている。
忘れ去られるのが一番しんどい
保存施設を非公開とする方針を正式に示したことについて、出席者から大きな異論は出なかったが、事故の風化につながることを懸念する声も一部あった。 JR西によると、説明会に参加したのは、中継会場を含む3会場で計65人。長谷川社長らが出席し、事故車両の保存施設や同社が進める安全対策を説明した。
保存施設については、反省と教訓を継承していくためにも広く公開することが望ましいとする一方、「事故車両を見るとつらい」「興味本位で見られたくない」といった意見も相当数あることから非公開に踏み切ったことなど経緯を報告したという。 説明会後に開いた記者会見で長谷川社長は、来年4月で事故から20年を迎えることについて、「遺族や負傷者の悲しみ、痛みが和らぐことは決してない。安全な鉄道を築き、安心いただけるようにすることが我々の責任だ」と述べた。 終了後、2両目で重傷を負った兵庫県多可町のデザイナー(55)は「公開してほしいと思っているが、(意見が分かれている)今の状況では無理だろう」と理解を示しつつ、「20年が過ぎたら急速に忘れられると思う。僕らも年を取るし、一部の遺族は亡くなり始めている。非公開にすることは忘れ去られる恐れがあるということでもあり、それが一番しんどい」と不安を口にした。