あまりに悪らつ!著名人かたる投資詐欺、50~70代「分別盛り」がなぜだまされる? 最大の自衛策「すべてのうまい話は疑え」
リアルに作られた動画と、「儲かった」と乱舞するチャット
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した国民生活センター相談情報部の小谷野武瑠(こやの・たける)さんに話を聞いた。 ――国民生活センターがこれまで取り上げてきた「投資詐欺」の被害相談は、若い世代が中心でしたが、なぜ、著名人をかたる投資話の被害者には50代以上の「分別盛り」の人が多いのでしょうか。 小谷野武瑠さん 厚生労働省の国民生活基礎調査を見ても、50歳台~70歳台の世帯主の平均貯蓄額は、ほかの世代より高いです。みな1000万円を超えており、特に60歳台は1540万円と、一番多く貯金があります。 子育てが一段落して、さあ、この貯蓄を使って老後の資金を増やそうとする時に、つい上手い話に乗ってしまうのだと思います。 ――投資に使うお金がたくさんあるというわけですね。しかし、なぜ著名人の広告に弱いのでしょうか。 小谷野武瑠さん その心理まではよくわからないところがありますが、相談内容を見ると、著名人が対談したり、講演を行なったり、リアルに作られている動画が多いようです。それがAIで作られているかは確認できませんが。また、サクラかどうかは確認できませんが、「儲かった」「儲かった」とグループ内で自慢し合うチャットに誘われるケースが多いです。
まず著名人の公式サイトで、本人か確認を
――なるほど。それで盛り上がって、どんどん投資額を増やすわけですね。 小谷野武瑠さん ただ、著名人を使う詐欺は一時的なブームのようなものだと思われます。2021年度には著名人の広告をめぐる相談は52件しかなかったのに、2年後の2023年度には、約30倍の1629件に膨れ上がりました。今後もその勢いが続くかどうか不透明です。 今年5月にSNSなどを運営するインターネットの大手プラットフォーム事業者に対し、不適切な投稿への迅速な対応を義務づける、「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)が成立しました。 施行は1年以内の予定ですが、著名人をかたる投資詐欺の歯止めになることが期待されます。また、政府も今年6月に対策プランを発表する予定です。 ――となると、著名人をかたる投資詐欺は下火になりそうですか。 小谷野武瑠さん いえ、しばらくは続くかもしれません。自衛の最大のポイントは、SNSの広告で投資を勧める著名人を見たら、本人の公式サイトや公式アカウントで投資に関する注意喚起が出ていないか確認すること。 次に、通常の株や金融商品の取引では法人名義の口座を使いますから、投資資金の振込先に個人口座を指定されたら、詐欺に間違いありません。絶対に振り込んではいけません。 ――ほかに重要なことはありますか。 小谷野武瑠さん 私たちは、著名人をかたった投資詐欺だけに注目しているわけではありません。詐欺師は年々手口を変えてきます。また、話題が沸騰している材料をネタに使います。昨年まではFXでしたが、今年は新NISAが狙われるでしょう。 一度、振り込んでしまったお金は、すぐに口座から移動され消えてしましますから、回収することは極めて困難です。「すべてのうまい話は疑え」ということを強調したいです。 (J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)