闇バイトに手を染めた青年の末路 「行方不明展」「イシナガキクエ」仕掛け人の新作スリラー
リアルがフィクションを浸食する不気味さ
こうしたリアルタイムな現実に映画がオーバーラップしてくるのが、「フィクショナル」の狂的な怖さ。ディープフェイクを身近な恐怖と思うかどうかの距離感にはまだ個人差があるかもしれないが、闇バイトがトピックとなった今この時期に世に出ることで、フィクションをリアルが侵食してしまっている。ひとごととして傍観できず、怪しいバイトにはご用心!という乱暴なくくりだけでは片づけられない気味の悪さをまとっているのだ。 そのうえで本作は、神保に見えている世界=現実が次第にゆがんでいくつくりになっており、隣人が怪しく見えてしまったり何者かに監視されていると感じたりして壊れていく神保を見ている観客にも、どこまでが真実なのかわからない――という映画的なツイストがなされている。映画史的な視点で楽しむ/論ずる深みもきちんと担保されているのだ。そうした意味では、同時代性と作品としてのクオリティーという内実を伴った野心作といえるだろう。
映画ライター SYO