「はるか頭上に井上がいた」寺地拳四朗が語る“モンスター”井上尚弥への本音…2学年下の怪物との出会い「“これは違う”というくらい強かった」
V13は「それしか選択肢がなかった」目標
寺地はもともと脚を使って距離を取るスタイルを身上としていた。'17年5月に世界王者となり、防衛を重ねながらKOを増やしていくが、なかなか主役にはなれなかった。イベントのメインはいつもミドル級五輪金メダリストの村田諒太や、派手に倒しまくる“怪物”井上尚弥だった。 当時の心境を問うと、「メインじゃないのはしゃあない。けがなく防衛できればいいという感じ」と答える一方で、「こんなにあっさり勝ってるのに、もう少し評価されてもいいやん、とは思っていた」との本音も明かす。心の中で「仕方がない」と「評価されたい」が同居していた。 2学年下の井上との出会いは高校時代に遡る。寺地が3年生の夏、インターハイ決勝で1年生だった井上と対戦して敗れた。 「1年生が相手だからいけるやろ、くらいに思ってたら、『これは違う』というくらい強かった。ただ、自分は高校時代、モチベーションがなくて『絶対優勝したい』とかなかったんですよ。負けるともう減量しなくて済むって、ちょっとホッとしてたくらい。だから、負けて悔しかったけど、そこまでショックではなかったかなと思います」
はるか頭上に井上がいた
大学をへてプロに転じ、ボクシングの楽しさに目覚め、本気度は増した。世界チャンピオンという頂に立ってみると、はるか頭上に井上がいた。自分は自分、井上は井上だ。そう思ってはいても、同じ時代に生きるボクサーとして、ケタ違いの強さを見せる怪物の影響から逃れることはできなかった。 寺地が具志堅用高の持つ連続防衛記録、V13超えをターゲットに定めたのも、井上という圧倒的な存在と無関係ではあるまい。この状況で自分という存在をどうアピールしていくのか。V13は「それしか選択肢がなかった」という目標だった。 V9戦で矢吹正道に敗れて夢はついえたが、王座を奪い返してからの寺地は2団体統一を果たし、手に汗握る“名勝負”を連発してファンの支持を高めた。しかし、どれほどがんばっても、井上は先へ、先へと未開の地を切り拓き、2階級で4団体統一の偉業まで達成した。寺地はその姿を半ばあきれるような思いで見つめている。
(「NumberPREMIER Ex」渋谷淳 = 文)
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