【大学野球】完全優勝した早大の心の拠り所「歴史は繰り返される」 部長の野望「早稲田で完結させる」を実現
2人のレジェンドに報告
当番校として東京六大学野球連盟の理事長を務める今春、日野部長には、密かな野望があった。 「早稲田で完結させる」 学生たちはベンチにある「歴史は繰り返される」を信じて戦った。早大の初代監督・飛田穂洲氏の教え「一球入魂」を全12試合、徹底してきた。立大、明大、東大、法大、慶大から勝ち点を奪取し、天皇杯奪還を決めた。 いよいよ閉会式である。早大・藤田南マネジャー(4年・開智高)が場内アナウンスで「天皇杯授与」をコール。控えていた表彰補助の早大の主務・中原由信(4年・早実)から理事長である日野部長、そして早大・印出太一主将(4年・中京大中京高)へと手渡された。日野部長が思い描いていた「早稲田で完結」を成し遂げたのだ。 閉会式後はすぐにバスで西早稲田の早大総合学術情報センター(中央図書館)へ向かった。初代部長・安部磯雄先生、初代監督・飛田穂洲先生の胸像前での優勝報告。かつての旧安部球場があった、早大にとって原点の場所。日野部長はチーム本隊よりも先に移動し、到着を待った。この日は試合中から激しい雨が降り注いでいたが、優勝報告の約2分間は、小雨に。天国からV奪還を見届けた2人のレジェンド。胸像も微笑んでいるようだった。 「東京六大学の重み、天皇杯の重みをあらためて感じました。安部先生の命日(2月10日)に合わせて毎年2月11日、野球部として墓参を行っています。その後、旧安部球場の跡地を訪れ、献花をしました。そこで『春に戻ってきます!』と、安部先生と心の中で会話をしました。実現できて良かったです」 優勝報告の後は優勝パレード、優勝報告会と祝賀行事が続いた。野球部は大学、学生、ファンとともに歓喜を共有。昨秋は慶大1回戦で優勝に王手をかけてから2連敗し無念のV逸。「多くの関係者が(祝賀行事の)準備をしてくださったにも関わらず、申し訳ない気持ちでした。この準備を実らせることができて良かったです」。気配り、心配りの野球部長から指導を受けられる学生たちは幸せだ。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール