〈3000円で買ったTシャツが30万円超のお宝に〉レコードに続いて「ロックTシャツ」も値上がり中…古着屋店主が明かす人気の秘訣と、今後値上がりが予想されるアイテム
ヴィンテージTシャツで人気のバンドは?
「つねに安定して人気があるのはニルヴァーナです。あと急激に最近、価格が上がっているのがレッド・ホット・チリ・ペッパーズの、1990年代に作られたTシャツ。彼らは2年ぐらい前からツアーでずっと世界をまわっているでしょう? そうするとライブ会場にレッチリのバンドTを着ている人がいっぱいいるから、そこに目を引くレアなヴィンテージTシャツを着てライブに行きたくなるんです。ここ2年でレッチリが一番値上がりしてますね。 アーティストが亡くなった場合に値段が上がると思われますが、それがそうでもない。たとえばラッパーのDMXという方が亡くなりましたけど、じゃあ、値段が上がったかというと、あまり上がらなかった。 半面、オフ・ホワイトのデザイナー、ヴァージル・アブロー(のちにルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクターも兼任)が亡くなったときに、ナイキとオフ・ホワイトのコラボスニーカーの値段は上がったんですよ。これはヴァージルが亡くなったから、今後オフ・ホワイトのコラボは出ないだろうというファンの心理からですね。 そもそも1990年代のTシャツはもう再生産されていないので、アーティストが亡くなっても絶対数は変わらないから、あまり変化はないんです」 「映画Tシャツで言えば、『パルプ・フィクション』や『ファイト・クラブ』が人気あります。何十万円もするTシャツを買われる方って、僕の体感で言えば35歳から50歳くらいなんですが、その方々が昔、VHSで見て感動した映画ですね。単館上映のような映画というか、名作と呼ばれていて今でも人気のある映画です。 『タイタニック』とか超メジャーな映画はTシャツの生産数も多いですから、あまり高くはならないんですよ」
オフィシャル、ブート、偽物の見分け方
Tシャツはボディにプリントするだけでできてしまうので、ロックTはフリーマーケットや多くの古着屋でも販売されている。その中にはオフィシャルなものもあれば、そうでないものもあるだろうが、見分け方はあるのだろうか? 「正規のライセンスをとって販売したものがオフィシャルで、ライセンスをとらずにアンオフィシャルに販売したものがブートレッグ、いわゆる海賊版Tなわけですが、じゃあブートが偽物かというと、そう簡単には言い切れない。 会場内のオフィシャルが5000円、会場外のブートが1000円なら、1000円のTシャツを買う人もいるだろうし、逆にオフィシャルより人気のブートTもあったりするんです。ただ、2024年に作ったTシャツを1997年のツアーTシャツとして売っていたら、それはフェイク、偽物なんじゃないかと思います。 1990年代に作られたものと最近のものとだとインクの素材が違ったり、プリントの割れる方向が違ったり、あとコピーライトのフォントが違ったりするんです。データをスキャンしてプリントするんですが、コピーライトが小さいので、そこだけ打ち直すとオリジナルと違っちゃうことが多いんです。 あとは単純に素材ですね。古いものなので当然経年変化があるわけですが、偽物はそれを30年経過したような風味にしている。そのほか糸の光沢やリブの太さなどで見分けることもできるんですが、見たことないTシャツの真偽を見分けるのは僕でも難しいですよ」 「バンドの世界ツアーでは各国でTシャツが物販されますが、販売用のTシャツを持って世界中を移動しているわけじゃない。それぞれの国でTシャツを作っているんです。だからアメリカバージョンのTシャツがあれば、ヨーロッパバージョンのものもある。そうするとディテールが国によって違うんですよ。同じツアーTでも色やタグなどが都市によって微妙に違ったりもする。オフィシャルがなんパターンもある場合もあるんです」 1990年代のTシャツはすでに市場価格が高騰しているが、今後、2000年代のTシャツも値が上がっていくだろうと岩谷さんは言う。となると将来的には、最近のTシャツも高くなるのだろうか? 「中国の人もTシャツ市場に参入してきてるし、相場はこれからも上がっていくと思います。昔は中国の人は中古品をあえて買わなかったんですが、若い人は古着に抵抗感がないので。 でも僕は2024年に作られたTシャツが今後、高くなるとは思えない。なぜかというと、昔とは作り方が違うからです。いまのTシャツのほうがクオリティは高い。技術が進んだので色落ちしないし、プリントも剥がれない。 でも人の手でシルクスクリーンで刷られて、個体差もあれば経年変化もある、そんな荒削りなところにロマンを感じる人が多いから、ヴィンテージTシャツが人気なんだと思います。それが崩れることはないんじゃないかな」 なんと。将来に期待してはいけない。1990~2000年代にロックTシャツを買っていた人はいますぐクローゼットをチェックしてみよう! 取材・文/高田秀之
高田秀之