まひろに「プリンセス感を」 越前国府と国守の館 貧しい暮らしからアップグレード 光る君へ「美術」の世界
平安時代に長編小説「源氏物語」を執筆した紫式部が主人公のNHK大河ドラマ「光る君へ」。まひろ(後の紫式部、吉高由里子)は、父親の藤原為時(岸谷五朗)の赴任先である越前へ共に下向した。平安京での貧しい暮らしとは違い、国守となった為時が仕事をする越前国府や、まひろ親子が住まう国守の館は上品で高級感がある調度がしつらえられている。つらい時期が続いたまひろに、国守の娘として「プリンセス感」を味わってほしいという美術チームの願いが込められたセットの舞台裏を取材した。 【写真】越前国府の執務室につながる廊 ■為時の存在感アピール 漢文の才が認められた為時は、宋人の船が漂着し、逗留している大国・越前(今の福井県の一部)の国守となる。 黒漆の調度に敷物、装飾的な衝立、白砂の庭-。地方政務を行う越前国府の執務室や、生活空間である国守の館では、華やかな調度品が揃い、暮らしのアップグレード感が演出されている。 NHK映像デザイン部チーフ・ディレクターの山内浩幹さんは「為時は、なかなか日の目を見ずに貧乏で恵まれない生活をしていた。越前国守は、初めての大きな役職。今まで苦労した為時を、ちゃんと立派に見せてあげたいなと思いました」と明かす。一方のまひろは、為時が無職の時期には、自ら家事を担うなど家のために働いていた。「為時は、今で言うところの県知事。まひろは知事の娘という立場。ちゃんと歓迎されて、もてなされてるような感じにしてあげたかった」と話す。 デザインを担当したのが、NHKアートの枝茂川泰生さんだ。越前編では、赤い世界観を意識していることから、松原客館に続き、越前国府や国守の館でも朱色の柱や、赤い御簾など、「赤」が強調されている。 越前国府に関する資料が少なく解明されていない部分が多かったが、枝茂川さんは「越前に限らず当時の全国の国府について、文献や発掘調査、復元資料などでリサーチし、時代考証の会議をするなどしてアプローチしました」と話す。 越前国府は、朱塗りで瓦屋根、土間に椅子、テーブルなどの唐風のしつらえだ。