<STAP細胞問題>小保方氏の博士論文取り消し でも早稲田大学の責任は?
早稲田大学は2日、都内で記者会見を開き、小保方晴子・元理化学研究所研究ユニットリーダーの博士号を取り消すことを正式決定したと発表しました。 <STAP細胞問題>日本の若手研究者への影響は? 損なわれた「博士」への信頼性 小保方氏は2011年、同大に提出した論文で博士号を取得していましたが、STAP細胞問題の発覚と同時に、博士論文には米国立衛生研究所のウェブサイトからの盗用など研究不正が多数あることが発覚。同大の調査委員会は調査の結果、11か所の不正があることを認定。これを受けて大学側は昨年10月に論文の取り消しを決定しました。しかし大学側にも不備があったことも認め、1年間の猶予を小保方氏に与えましたが、博士論文としてふさわしい論文が提出されないまま猶予期間が終了したためです。
審査に値する論文がないまま猶予期間が終了
会見で説明に立ったのは、古谷修一・早稲田大学教務部長、佐藤正志・同理事、鎌田薫・同総長、橋本周司・同副総長の4人。小保方氏本人や問題になった論文の指導教員や今回再提出にかかわった指導教員らの姿はありませんでした。 説明によると、同大は昨年10月の決定に従って指導教員を選出し、論文の指導体制を整えて小保方氏に接触していたが、初めて返事があったのは今年5月で、指導が始まったのは6月だったといいます。指導教員の具体的な名前などは明らかにしませんでした。 大学側は、小保方氏の体調面などを考慮し、指導を受けるために小保方氏が大学に来ることは困難だと判断しました。そのため指導教員らは、メールや電話で草稿の内容を確認したり訂正の指示をしたりする一方で、3回ほど直接本人を訪ねました。また小保方氏にe-ラーニングによる倫理教育も受けさせたといいます。 小保方氏は計4回の改定稿を提出。「不適切な引用」などの修正は終わりましたが 、「結論に至る科学的論拠」や「記述の論理性」について必要な訂正がなされておらず、審査を受ける完成度には達していないと大学側は判断しました。どのような訂正がなされたについては「具体的には控える」として、詳しくは説明されませんでした。「最終稿であれば、『これがおかしい』と指摘できるのですが、ご本人がこれは途中のものであるというので、これ以上のことは申し上げられません」(橋本副総長)。 小保方氏は猶予期間の延長を求めたといいますが、同大はそれに応じないことを決めました。そして、審査に値する論文がないまま猶予期間が満了し、学位の取り消しが確定した、と説明します。「このまま放置して、論文のないまま学位を存続することはできないので、延長はしませんでした。本学はよりいっそうの取り組みを行なって信頼回復に取り組んでいく所存であります」と鎌田総長はいいます。 小保方氏が博士論文にまとめた研究は、その後、ハーバード大学や理化学研究所で発展し、一度は『ネイチャー』に掲載され、そして撤回されたSTAP細胞論文にもつながったものです。つまり早稲田大学がしっかりとした指導を行なっていれば、その後のSTAP細胞問題は起きなかった可能性もあります。しかし鎌田総長は「STAP細胞について早稲田大学としてコメントできることはありません。あくまでも学位論文についてだけです」と責任の範囲を限定しました。