『フロストパンク2』レビュー。極寒世界をサバイバルする都市運営シムが、よりスケールアップして進化。寒さよりも人間の恨みが怖い!
ポーランドの11 bit studiosによるストラテジーゲーム続編『フロストパンク2』が、PC/Mac向けのデラックス版アーリーアクセスを開始した。今回PC用のレビュー版を入手してひと足先にプレイしたので、その内容をご紹介しよう。 【記事の画像(10枚)を見る】 なおPC/Mac版の正式発売は日本時間の2024年9月21日午前2時を予定しており、PC Game Passにも対応予定。そのほか発売時期は未定だが、PS5/Xbox Series X|S版の展開も別途予定されている。 ニューロンドンの人々は新たな栄光を掴めるのか? フロストパンクの舞台は、1886年に始まった大寒波によって存亡の危機に陥ったスチームパンク世界のイギリス。時にマイナス100度に達するような終わりなき極寒世界を、なんとか街作りを通じて生き延びるという“都市のサバイバル”ゲームだ。 『フロストパンク2』はその30年後、依然として終わらぬ冬に苦しみながらも、かろうじて石炭時代から石油時代に突入しようとする世界が舞台だ。しかしぶっちゃけ、「30年も続いたんなら、もう結構なんとかやってけるんじゃない?」と思う人もいるだろう。 実際、そういう面もある。たった80人で荒野に放り出されてメシも食わずに石炭を拾うハメになった初代『フロストパンク』のひもじくわびしい感じはもうない。今回のストーリーモードは最初から数千人規模でスタートするし、各種資源も多少の蓄えがある。 ストーリー第1章開始直後のニューロンドン。また石炭を手拾いするレベルから始まるわけではない しかし当然、そんな簡単な話なワケがない。そもそもシミュレーションゲームとしてのアプローチが結構違うのだ。 1. 個別指定からマクロレベルの管理をするゲームに 『フロストパンク2』で、街作り要素は結構変わった部分だ。前作のように建物を一個ずつ置いたり道路を引いたりする必要はないし、優先したい施設のために労働者やエンジニアを1人単位で割り振りし直すようなこともない。 今作は基本的に、そういったこまごまとしたものを個別に指定していくよりも、全体の需要と供給の収支を見ながらマクロレベルの管理をしていくゲームになっている。これは正直、ちまちまとやりくりするのが好きだった人には残念な部分かもしれない。 たとえば建築は、基本的には住居地区・食料地区・採取地区・工業地区などの”地区”単位で行う。新たに地区を作りたい場所をヘックス単位で指定すれば自動で道が引かれ、建物群が完成するとともにフル稼働が開始する。各地区はそれだけで基本的な機能を備えているので、前作のように石炭と資材の採集でそれぞれ別の建物を用意する必要もない。どちらも“採集地区”でカバーできる。 各地区の空きスロットには、能力特化を担う“建物”を設置できる。技術開拓次第では石炭から石油を作り出せるようになったりしてアツい。 建物の配置を考える時に重要だった熱の伝わり方なんかも、今作ではゆるくなっている部分だ。前作では中央のジェネレーターからの熱を有効活用するために同心円状に広げた街が象徴的な風景になっていたけども、今作では各地区と熱源との距離はあまり致命的な問題にならない。出力が足りてさえいれば、ジェネレーターからどれだけ離れていようとも必要な分の熱が供給されるようになっている。 ただしジェネレーターなどが隣りにあるとその地区が要求する熱需要が下がるといったボーナスもあるので、コスパを極めるには地区をどう隣接させていくかが大事 必要量に応じて自動的に配分されるのは、労働力も同じだ。前作のように一般の労働者とエンジニアの違いはないし、減産をしてでも他の施設に人を回したい時などは1本のスライダーで簡単に調整できる。 熱にしても物資にしても労働力にしてもトータルでうまく再配分をやってくれるシステムなので、全体の管理はやりやすい。個別の数字を全然把握していなくとも、何かの項目で大きなマイナスが起きた時に細かいデータを見て対処を考えればいいからだ。ただし繰り返しになるが、このシミュレーションゲームとしてのスタイルの違いは本当に好みが分かれると思う。 2. あっちを立てればこっちが立たず……政治の泥海を泳げ! 一方で一気に複雑になっているのが住民との交渉要素だ。今作では議会が登場し、それぞれ異なる理想を持つ複数の住民グループと交渉していくのが非常に大きな要素となっている。 これはマジの“政治”要素だ。必要な法案の通過を助けてもらう代わりに相手のグループが要望する技術を研究したり、逆に通ってほしくない法案が議題にかけられたら反対工作を仕掛けたり。関係性が良ければ足りない資金を引き出すこともできるし、逆に関係が悪化すれば公然と暴動を起こされたりもする。 さてこの法案を確実に通すには、ニューロンドナーズかフロストランダーズの協力を取り付けないといけない……。 イベント時の選択も勢力との関係に影響する。 今作のテクノロジーツリーは前作のような階層のアンロックなどはないので比較的思ったように進めやすいはずなのだが、研究対象をホイホイ政治的取引の材料にしていると、なかなか本命の技術に移れなかったりする。 そんな感じに法案成立にも技術開発にも勢力が関係してくるのだが、序盤はそこまで障害にならないので安心して欲しい。支持がそこそこ高ければ割と工作なしでそのまま押し切れたりするし、そもそもどのグループも世の中を良くしたいというのは一緒で、あくまで好む方向性やアプローチが違うだけ。協力を依頼する際に3つ提示される交渉案のうち、だいたいひとつぐらいは妥協点が見つけられるものだ。 さぁ、マシな妥協案はどれかな? 探すと結構“自分も研究開発したかった施設の別案”とかあったりして「まぁちょっと公害強いけどいいか、この施設自体は欲しかったし」となる。 政治の厄介な部分は中盤以降、進化の方向が定まってくる中で段々と露呈してくる。みんなにそこそこいい顔をしてヘラヘラやっていると過激な分派ができてしまったり、それまで支持してくれた団体に突然落胆されたりする。となると反発を抑え込むために警備を増強したり強健化を進めるといった策や、厄介な勢力の弱体化などの裏工作も選択肢に入ってくるわけだ。 うーんめんどくさい、でもドロドロの政治の中を泳ぐのは楽しい! 過酷な世界のイヤ~な味は本作の特徴でもあるが、それは今回政治がらみの部分が多いと思う。とある秘密が隠された廃墟を見つけた時、それまで懇意にしていた団体の裏の顔を知って思わず笑ってしまった。 ちなみに、比較的自由にプレイ可能な“ユートピア・ビルダー”モードでは登場勢力をランダムに設定できるのだが、これはストーリーモードで基礎を習得した人向けのモードだからこそ、ぜひランダムな組み合わせが引き起こすチャレンジに挑むのをオススメしたい。 取得した法案などに応じて新勢力が発生したりする。特殊能力を持っていることもあるのでアツい。 3. 複数マップにまたがった都市圏の構築が可能に さて前作にも遠征要素や各地の物資拠点との交易の確立などの要素があったが、今作ではこの部分が強化され、複数マップにまたがった開拓なども可能に。ストーリーモードでも序盤のクリアーに欠かせない要素として出てくる。 ニューロンドンの前哨基地としてプレイするのは前作の追加シナリオ“綱渡り”にも出てきたシチュエーションだが、今度は一方的に指示を受けたりすることもなく、どっちも自分がコントロールする形だ。 これはなかなか楽しいが、本家から植民先に人を連れてきて、石油採掘をセットして、輸送路を確立して、石油と必要物資を引き換えにする定期便をセットして……とやっている間に当然本家でも植民先でも細かな問題が発生するので、その度にマップを切り替えてマネージメントしていくことになる。 熱や労働力や資源の配分が自動で行われるシステムになっている点について先ほど触れたが、すべてを細かくコントロールするシステムのままだったら、こういった作業は結構面倒になっていたはずだろうと思う。 “旧大型機関車”はチュートリアル部分でも登場するマップ。コンパクトだが石油を採掘できるのがポイントだ。 交易路を確立すると資源や人を移動できる。 個別マップになっていない従来型のスポットも登場する。子供だけが住んでいた炭鉱と言えば……。 テーマの発展に応じてシステムが変化した続編 というわけで本作、単に石炭から石油に時代が移り変わったわけではなく(ちなみに進化の方向によっては地熱なども利用可能)、30年耐えてきたからこその先にある新たな衝突や「終わらぬ冬を今度こそ克服できるのか?」といったテーマにふさわしい拡張路線と、それに応えるシステムになっていると感じた。 ちなみに、大体起こることや必要になってくるものの展開を把握しているかいないかで難度感が変わってくるのは前作同様。前作をあまりやり込んでいない人はまず最低難度(市民)からプレイして、内容を把握していくのがいいだろう。