当時の心境や継続的な支援を訴えた京都アニメーション放火殺人事件の被害者家族＝14日、青森市

　2019年7月に36人の死者を出した京都アニメーション放火殺人事件で、被害者の家族が14日、青森市で講演し、事件後の心境や経過を振り返るとともに、被害者への継続的なサポートと犯罪のない社会づくりを訴えた。 　講演したのは事件で亡くなった、同社の美術監督の渡邊美希子さん＝当時（35）＝の母達子さん（74）と、兄の勇さん（45）。警察などの依頼を受けて全国で活動しており、今回は犯罪被害者等支援県民フォーラム（青森県被害者支援連絡協議会などが主催）に参加した。 　達子さんは「京アニが燃えていると知らせを聞き、慌ててテレビをつけると、娘が『もうすぐここで働くからね』と見せてくれた場所だった」と当時の衝撃を告白。 　遺品整理に追われ、「寂しい、あの子に会いたい」と感情が入り乱れる中、警察から被害者支援のカウンセリングを受けることを勧められたといい、勇さんは「感情の整理をさせてもらい、すごくありがたかった」と振り返った。 　被害者へのサポートについては「一度断られても後になって様子を見てあげてほしい。その一声で救われる人もいる」と継続した支援の必要性を訴えた。 　達子さんは犯罪のない社会づくりに向けて「誰もが自信を持って生きていける社会があれば、嫌な事件は減っていくのではないか」と強調した。 　事件を巡っては、今年1月、一審の京都地裁が、殺人罪などに問われた青葉真司被告（46）に対し、死刑判決を言い渡したが、同被告は判決を不服として控訴している。